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好きなんだ(アスシェリ)



随分と長い間気付かなくて、彼女をだいぶ待たせてしまった。情けないことに、多分初めての恋で。そしてこれが最初で最後のつもりだ。だから、何が正解かなんて分からないけど。でも今こうして傍にいるだけで感じる幸せな気持ちは、本物だから。




「なあ」

「…何?」



ソファーで編み物をしているシェリアの背後から、ゆっくりと腕を回し、目の前にある頭に自分の顎を乗せてみた。ふんわりと、花のような香りがする。落ち着くのと同時に、心臓が騒ぎ出してしまう。でも嫌な感覚ではないから、アスベルはそのまま甘えるように顔をすり寄せた。こうでもしないと、緩んだ口元が現れてしまいそうで(現時点ではシェリアから見えないが)。しかし出来心でやったことだが、やはり椅子を挟んでの密着はなかなか苦しい。ソファーが激しく邪魔だと思ったが、まあ仕方ない。こんなことをしておいてなんだが、一緒に座って抱き締めるのは何だかまだ恥ずかしくて、抵抗があるのだ。




「シェリア」

「…もう、本当にどうしたの?アスベル」




クスクスと笑われてしまった。急に甘えてくるなんて、怖い夢を見た子供みたいね。編み物、出来ないじゃない。注意するような言葉だが、響きはいつになく柔らかい。子供を諭すような声色に、こちらもつい笑ってしまった。



「怖い夢なんて見てないけど…そうかもな」

「え?」

「幸せ過ぎてさ。逆に怖いかも」

「…〜〜っ、ずるい…」

「ん?」



こちらを振り向いたシェリアは、少しいじけたように頬を膨らませた。なんで急に不機嫌なんだよと言えば、呆れたようにため息をつかれてしまった。…何だよ、もう。



「本当に天然でそういうこと言うんだから…今に始まったことじゃないけど」

「?」

「いいわよ、もう」




仕方ないとシェリアは苦笑して、編み物の道具をテーブルの上に置く。そのままもう一度、アスベルのほうに振り向いた。自然に視線が交わり、頬を赤く染める。




「怖くなるのは、私だって…」

「シェリア…」

「でもそんなこと…アスベルは考えなくていいの」

「どうして?」



恥ずかしそうに目線を逸らしているシェリアが可愛くて、意地の悪い質問をしてしまった気がする。でもどうしても、答えが聞きたかった。『なあ』と続きを促せば、言い辛そうにしながらも、ゆっくりと言葉を繋げてくれた。




「……アスベルが例え私から離れたくなったって…離してあげないんだから」

「…シェリア…」

「もう!こんな恥ずかしいこと言わせな……っきゃあ…!」




シェリアをありったけの力を込めて抱き締める。やはり、ソファーが邪魔で仕方なかった。




「…俺ももう、絶対にシェリアを離さない。置いてなんかいかない」

「っ、」



好きだ。
好きなんだ、シェリアが。そう言えばシェリアは馬鹿!と顔を胸に埋めた。どうして今まで気が付かなかったんだろうと思う。抱き寄せるだけでこんなにも激しく鼓動を打つ心臓も、一緒に居ると感じるあったかい気持ちも、今はこうして分かるのに。初めての恋だから、上手い気持ちの伝え方なんて分からない。だからこうして抱き締めて、言葉で伝えるしかなくて(もしかしたら不安にさせているかもしれない)。この気持ちは嘘じゃないと伝わっているのだろうか。



「…信じてる、から……」

「シェリア?」

「……だからもう、今はこれ以上恥ずかしいこと言わないで…」




顔、上げられないじゃない…なんて力なく言う。見れば未だに顔を埋めているシェリアは、耳まで真っ赤だった。それにつられて赤くなる顔。くすぐったくて恥ずかしい気持ちになったが、それよりも可愛く思う気持ちのほうが大きい。だからアスベルは懲りずに、シェリアの耳元で愛の言葉を囁くのだった。



(好きだよ、シェリア)





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砂糖を吐くほど甘いアスシェリ。きっと夫婦←



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