臆病なのは(ロイ←しい←ゼロ) (こんなに苦しいことだったなんと、今まで知らなかった) こんなアタシにも、誰にでも。 分け隔てなく、太陽みたいな笑顔。一番最初はこの気持ちが何なのか、分からなかった。暫くして、これが"恋"なのだと言うことを知った。 (ああ、また) ホラ、簡単に目があの鳶色の髪を見付けてしまうんだ。 「しいな!」 あったかい笑顔と名前を呼ぶ声。 嬉しく思うのと同時に、苦しくなる。臆病なアタシは、叶う筈のない恋なのだと諦めている。 (ホラ、アイツの隣にはいつもあの子が居るのに) こんなアタシなんて。 「バッカじゃねーの?」 また無意識に遠くからロイドとコレットの事を見ていた。すると、後ろから腹の立つ声。 「何がだい。いきなり失礼だね」 「んだよ、元気ねーな。殴らねェの?」 「うるさいよ、アホ神子」 ロイドとコレットが笑い合ってるのが見えた。チクリと、胸が痛む。 「…まだ何もしてねーじゃん、お前」 「…っ、な、なんの…!」 カッと顔が熱を持つ。 アンタに何が分かるんだ。『なんの話だ』と言おうと振り向けば、ゼロスはいつもより真剣な顔をしていて。思わず息を飲む。 「とぼけんなよ。しいな」 「…」 「早いモン勝ちじゃねーんだよ」 ゼロスは視線を合わせず、ただそう言って。何故か少し悲しそうに、笑った。 「届くかもよ?」 「…、」 「今なら、いけるかもだぜ?」 ポン、頭に手を置かれた。 そのままクシャクシャ、と撫でられる。嗚呼、なんで今日はこんなに優しいんだ…コイツ。不覚にも、涙が出そうになった。 「……いつから知ってたんだい」 「んー、最初から?」 「!!」 「でひゃひゃ、俺さまは女の子の事ならな〜んでも知ってんだぜ?例えば、しいなのスリーサイズとか」 「アホ!!!」 「ってェ!この怪力女!!」 前言撤回だ。 やっぱりコイツはただのアホだ。クルリと踵を返して、その場を後にしようとした時、声がした。 「しいなはそうじゃなくっちゃな」 「……ゼロス…」 「俺さまは、全国のハニー達の味方だ。頑張れよ、しいな」 (…そう。早いモン勝ちじゃ、ねェよ) アイツよりは長い付き合いである筈の俺が、負けてんだから。ま、相手がロイドくんじゃ…勝ち目はねェわなァ。 (本当に臆病なのは俺のほうだよ) 「お色気作戦でハニーもイチコロだろ」 「もう一回殴られたいみたいだねェ」 「だ〜から殴ってから言うなよ!!」 真面目なんだかアホなんだか分からない。でも、心が少し軽くなった気がする。ありがとう、と小声で呟くと、それが聞こえたのかゼロスは笑った。 「ま、自信持てや。しいなの可愛さは俺さまが保証してやっからさ」 「…アンタに保証されても嬉しかないよ」 「でひゃひゃ、そりゃそうだ」 (頑張ってみよう) (ありがとう、ゼロス) ------ ロイド←しいな←ゼロス。 一方通行も好き(可哀想なゼロスはもっと好き←) |