大好きでしたA(フーリエとパスカル)
「ヒューくん、結婚しちゃうんだって」
「……そう」
姉のフーリエにポツリとそう呟くと、まあ立場的には仕方ないでしょうね、と続けられた。何故だろう。ヒューバートから結婚について告げられた時、凄くショックを受けた自分が居た。嬉しいことの筈なのに。
「いやあ〜、まさかあたしより年下なのにもう結婚しちゃうだなんてビックリだよね!結婚式っていつやるのかな??楽しみだなあ〜」
「それは本気で言ってるの?」
「えっ、何が?」
「……呆れた」
茶化すようにそう言ってフーリエを見れば、思ったよりも真剣な顔を浮かべている。視線がかち合って、パスカルからも笑顔が消えてしまった。全然嬉しそうに見えないわよ、とデコピンをされる。アンタは本当に自分の気持ちに鈍いんだから。叱る時の口調だ。でも自分でも分からない。なんでこんなにショックを受けているんだろう。額を両手で覆って、様々な考えを巡らせる。
「本当にいいのね?」
「?」
「ヒューバートが結婚することよ」
「あたしがやだって言うの、変だと思うよ」
「……」
こんなにも動揺してしまっているのだから、いいのね?と聞かれれば、きっと答えはノーだ。仲間内の喜ぶべき出来事。それにショックを受けて、いやだと思うなんて最低なんだと思う。だからそれを受け入れたくなくて、見てみぬ振りをしていたのに。自分でもよく分かんない、とパスカルは続けた。もう本当に、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「そりゃあお兄ちゃんのアスベルとか、幼なじみのシェリアとかが言うんならまだ分かるよ。でもあたしは違うもん。あたしは……」
あたしはただの仲間で、ヒューくんの友達だもん。そう言おうとした口から言葉は出ずに、嗚咽が零れた。苦しい。気付けば涙を流していた。
「あれ?…なん、で…」
「……」
辛そうに顔を歪めたフーリエが、不意にパスカルを抱き寄せた。ギュッとされるのって、いつ以来だろう?なんて頭の片隅でぼんやり思いながら、そのまま甘えるように顔を埋めてみる。止まらない涙に逆らうことなく、パスカルは肩を震わせて泣いた。
(馬鹿だなあ、あたし)
何故か自分の中で、ヒューバートは何となくずっと近くに居てくれるものだと思っていた。そんなことある筈がないのに、それが当たり前のように感じてしまっていたから。ただの仲間や友達では、そんなことはあり得ないのだ。そう今更気付いても、もう何もかもが遅い。
(ずっと一緒に居たかったなんて、気付かなかった)
せめてヒューバートの結婚式までに、この苦しさが少しでも和らぐようにと祈るしかなかった。
こんな最低な気持ち、
(早く無くなっちゃえばいいのに)
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意図したつもりはなかったんですが、8/14の『僕が愛さなくたって』と繋がってますね。
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