好きの意味が違います(リチャ→パス) 「いい天気だねえ、リチャード!」 「そうだね。この場所はいつ来ても、とても気持ちがいい」 昔アスベル達にも見せたことがある、この景色。今隣に居るのは、銀と赤のグラデーションの髪を持つ彼女―――パスカル。休憩がてらの自由時間に、声を掛けて付き合って貰ったのだ。気持ちよさそうに両腕を伸ばす彼女を見て、本当に連れてきて良かったと思う。パスカルと会話している時の柔らかい空気が、何となくリチャードは好きだった。 「あ、そっか。リチャードのお気に入りの場所なんだっけ?」 「うん、そうだよ。でも今日は、普段よりも特別に嬉しいな」 「ん?どうして?」 「パスカルさんと、こうしてこの景色を見れたからね」 「おっ、それは嬉しいですなあ〜」 「…ふふふ」 自分が遠い昔にどこかへ置いてきた色々なものを、たくさん彼女が持っていると思った。その無垢な琥珀の瞳も、無邪気で自由な言動も、自分にはないもので。羨ましいと思うのと同時に、とてもいとおしくなる。彼女はアスベルやソフィとはまた違う意味で、特別だった。 (きっと彼女は気付かないだろう。僕がこんなにも救われていることに) 人を疑う醜い気持ちも、荒んだ心も。最初から何も無かったかのように和らいで溶かされていく。それはパスカルという人物だから出来ることなのだ。身分も関係なく、ただ一人の人間―――仲間として真っ直ぐに接してくれる。その天真爛漫さに、何度気持ちを救い上げられたことか。その度に強く惹かれていった。きっと彼女は、そんなことを夢にも思わないけれど。 (現金なことに、彼女を見ているとこの世界もまだ悪くないと思ってしまう。この景色を見ている時と同じ気持ちになる。こんなことを言ったら、笑われてしまうだろうか) 「パスカルさん」 「ん?」 「好きだよ」 真っ直ぐにパスカルを見つめて、それを告げてみた。緊張もなく案外するりと喉から出たその言葉は、自分とは思えない程に優しい響きに聞こえた。彼女は一瞬だけ目を見開いて、こちらを見つめる。そのままゆっくりと目を細めて、ふわりと笑った。それはリチャードが好きだと感じる、優しい笑顔だった。 「うん。あたしも好きだよ」 「ふふ、ありがとう。今はまだ、それでいいかな」 「へ?」 「いや、ごめん。気にしなくていいよ」 さも当たり前のようにこちらに告げられたその言葉は、リチャードの言葉とは少し意味が違っているもの。ああ、やはり気付かない。でも今はそれでいい。クスクスと笑うこちらを見て不思議そうに首を傾げながら、変なリチャードと呟く彼女にまた笑って、そうかもねと返事を返した。 幸せは今此処に (そう簡単に逃がしてはあげないけどね) (そういえばリチャード、最近よく笑うようになったね) (そうかな) (そうだよ) (…じゃあ、バナナパイでも食べにいこうか) (えっ、いいの!?やったあ!) (パスカルさんのおかげ…って、聞いてないか) ------ ちょっと気分転換に書いてみたが、リチャ→パスもいいじゃないか(真顔) リチャードってはっきり好きって言いそうで、自然にリードしてくれるからふんわり甘い雰囲気になった。いいなあ、リチャ→パス…弟がぼんやりしてたらすぐかっ攫われるな← |