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大好きでした(ヒュ→(←)パス)



彼女を呼び出したのは、真昼のオープンカフェ。それぞれの前にはバナナパイとバナナジュース(その組合わせはどうなのかと未だに思うが)、コーヒーが置いてある。何とも幸せそうにパイを頬張るパスカルを見て、ヒューバートは一瞬辛そうに目を細めた。自分はこれから、この笑顔を曇らせてしまうということを理解していたから。



「パスカルさん」

「んっ?」



それでもパスカルに気付かれたらマズいと、直ぐに取り繕う。ちらり、と相手と目が合った。一呼吸置いてから、冷静に言葉を紡ぐ。



「見合いの話を、受けることにしました」

「…えっ」

「結婚するんです。僕」



結婚の言葉に、目を見開く。彼女としては珍しく少しの間無表情になって、目を泳がせて手元のジュースを飲みほすと、にっこりと笑顔を浮かべた。ヒューバートは、胸が苦しくなった。パスカルにそんな辛そうな表情をして欲しくなかったから。



「…そっ、か。良かったね、おめでとう〜!でも、何で急に?」

「相手の方には、僕が居なくてはダメなんです。だから……」

「そっかそっか!じゃあヒューくんが傍に居てあげないとね!やったじゃん、モテモテだね!」



此方の言葉に被るように言葉を紡ぐパスカル。いつになく動揺している様子が見て取れてしまい、口に含んだコーヒーの味を感じることさえ出来なかった。



「…すみません」

「やだなあ、何で謝ってるの?お祝いすることだし、喜ぶことなんだから!」

「……」

「そんな顔しないでよ。あたしは大丈夫だからさ」



今にも泣き出しそうな声。
それでも抱き締めてやることは、もう出来ない。




「結婚式には呼んでね!あたし、ちゃんとお風呂に入っていくから」

「…はい」

「じゃあ、今日はここら辺で。またね、弟くん!」

「…さようなら」



逃げるように走って行った彼女を咄嗟に捕まえようとした腕。そのまま行き場をなくして、力無く下げた。酷いことを言ったのは自分だし、泣きたいのは彼女のほうだ。それなのに何故今、胸が焼けるように痛み自分のほうが泣いているのだろう。




僕が愛さなくたって
(幸せになって欲しいと思うのは、エゴだろうか)



(たとえば僕が 様)



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ヒュ→(←)パス。
養父に脅されたりしたんだと思う。


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