もっと甘えてよ(ヒュパス)
時折不安そうに揺れる瞳。
(何となく守ってあげたくなるなあって思うのは、母性本能って奴なのかな?)
ただいま、まったりと部屋の中で寛ぎタイムを満喫中である。長い期間を経て晴れて恋仲になった二人。ヒューバートに構って貰おうと、彼女がじゃれついていた。
「ねー、ヒューくん〜」
「何ですか、そんな甘えた声を出して。バナナパイはさっき食べたでしょう」
「ギュッとしてもいい?」
「……」
「あ、照れた」
「…勝手にして下さい」
肯定と受け取ったパスカルが抱き付いてみた。ビクリと肩が一瞬飛び跳ねるが、確かめるようにゆっくりと腕が背中に回って来る。それにたまらなく幸福感が増す。顔を真っ赤にして全力で否定してこないだけ、だいぶマシになったのだろう。赤面している顔見たさに見上げようとしたら、腕の力を入れられて阻止されてしまったが。
「ヒューくんくるしい」
「ぱっ、パスカルさんが余計なことをするからでしょう!!」
「み、見ないから、もうちょっと力抜いて…」
「すみ、ません…」
バツが悪そうに顔を背けるヒューバートに、気にしてないよと告げる。案の定真っ赤だった耳が目に写ったが、笑うのは我慢した。せっかく二人で居るのに、あんまり機嫌を損ないたくはないからだ。
年下なのになあ。
パスカルはそんな事を思う。5歳も下の筈なのに、しっかりしていて真面目で。でもふとした時に、無理をしているんじゃないかなあと思うのだ。もっと、自分にくらいは甘えてもいいのに。
「ヒューくんは、頑張り屋さんだねえ。偉いなあ」
「…パスカルさん?」
ポツリと心の中で呟いた筈の言葉が口から出ていたらしい。不思議そうに名前を呼ぶ恋人の頭を撫でてみる。
「でも、あたしはヒューくんが頑張り屋さんだから好きなんじゃないよ。ヒューくんだから、好きなんだ」
「……」
「ちゃんと、好きだからね。たくさん無理しちゃダメだよ?」
ちゃんと伝わっただろうか。
いや、伝わらなくてもいい。せめて大事に思っていることが分かってくれれば、それでいい。
無条件の愛情なんて、直ぐには信じて貰えないかもしれない。けれど、置いていかれることに酷く恐怖を覚えているヒューバートに、教えてあげたかった。どこにも行かないし、ずっと傍に居るし、ちゃんと大好きなのだということを。不安な事があるなら、少しでも取り除いてあげたい。
(あ、母性本能じゃないか…。愛のパワーだね、多分)
そして恥ずかしがり屋で素直ではない彼である。気付いた時は、求めていることを極力やってあげたいと思っている。ちゃんと出来ているかは分からないが、こちらが甘えるフリをして甘えてもいい。抱きしめてもいい。とにかくもう二度と、ヒューバートが苦しい思いをしないように。
「…パスカルさん」
「んー?」
「好きです」
「…あたしも好きだよ。っていうか、絶対あたしの方がヒューくん好きだよ!」
「……張り合ってどうするんですか」
思いが通じたのか。頬を赤らめながらも、こちらを真っ直ぐ見つめて告げたヒューバートに、ありゃ?珍しいなあ、なんて思いつつも嬉しさで緩む頬。ああ、涙出そうかも。幸せだね。ヒューくんも同じだったらいいなあ。
徐々に近付くヒューバートの顔に、パスカルはそっと目を閉じた。
愛ならひとかけら残さずあげるから
(もうちょっと寄り掛かってもいいんだよ?)
(反転コンタクト様)
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砂を吐く程甘くしようと思ったら、ヒュパスっていうかパスヒュになってね?っていう←
たまには歳上らしさを見せるパスカルさんに、弱ってるヒューっていう。趣味満載だけど後悔はしていない。
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