お前いい加減素直になれよ(ゼロスとロイド)
──イライラしていた。
自分でも大人気ないと思いながらもゼロスは、かつてない程にイライラしていた。
ゼロスにしてはこれまでになく長いお付き合い期間を経て、妻であるしいなとゴールインしたのは3年前のこと。妻のほうはともかく、夫のほうには落ち着きそうにない結婚に無縁なイメージがあった筈なので、当然仲間内からは驚かれるのではないかとゼロス本人は予想していたのだが、驚くどころかみんな揃って『やっとか…』というような顔で祝福してくれた(ほっとけ!byゼロス)。それが嬉しいやら悲しいやらで…まあ、それはともかくだ。
式を挙げて新婚旅行も済ませ、甘〜い新婚生活(ゼロス談)を経て、あれよあれよといううちに二人の間には息子が一人。とにもかくにも元遊び人は、ごく一般的な家庭を築くことが出来たのである(因みに、未だ新婚気分さながらにベタベタしているのはゼロスだけである)
「………」
「……なあ、ゼロスー」
その日夫婦宅に遊びに来ていたロイドは、極めて不機嫌そうな顔でしいなと息子をテーブルに頬杖をつきながらガン見しているゼロスに困った顔をして声を掛けた。
「……」
「おい、ゼロス聞いてんのか」
無視か。無視なのか。
嗚呼、奴の周りに黒いオーラが出て来た気がする。効果音なんて聞こえる筈がないのに、『ゴゴゴゴゴ…』というような幻聴まで聞こえ始めた。普段お喋りであると自他共に認める男が、眉間に皺を寄せながら黙りこくる様は逆に恐い。出会って長いこと経つが、大体いつもヘラヘラしているゼロスがここまでイライラしているのは珍しいとロイドは思う。それというのもこの男には、自分の感情をひた隠しにする悪いクセのようなものがあったのだ。
恐らく自己防衛本能からくるそれを和らげるには、彼と友人関係にあるロイドも随分と苦労させられた記憶がある。出会ったばかりの頃の、どこか人との距離を一線引いたような態度を思い出して苦笑する。大分良い意味で変わったのだ、この男は。しいなと出会ってから、確実に。
「──なあ、ゼロス。言いたいことがあるんだったらハッキリ言えってお前に言うの何回目だっけ?」
「……別に」
あ。
やっと口きいた。
でもどっち向いてんだこっち向いて話せ。
「あのなあ、それじゃ答えになってないだろっ」
「んなの覚えてねェっつーの」
「……はあ…ったく…」
素直なのか素直じゃないのか。
だが頭の良いゼロスでさえ覚えてられないぐらい言われてる自覚はあったんだな、と思った。取り敢えずはブスッとした表情を微塵に隠さないことを内心微笑ましく思いながらもため息をつく。言うまでもなく、拗ねているのだ。良い歳して全く…と思いながらも、ロイドはそんなゼロスが嫌いではなかった。
赤毛いじけ虫が見ている先にロイドも目をやる。其処には母になったしいなが、三歳になる息子を膝に乗せて一緒に遊んでいる姿。三歳は甘えたい盛りだ。しかも息子は父よりも母のほうが好きだと見るからに分かる。寧ろゼロスとは、母を取り合うライバルのようなものなのである。……あ、しいなと頬擦りしてる。ちらりとゼロスを見れば、プイッと顔を逸らされた。一体どっちにヤキモチを妬いてるんだなんて、きくだけ野暮だろうか。
「…ホラ、あっち楽しそうだぞ。行ってこいよ」
「別に何とも思ってねーし」
「この期に及んでまだ言うか」
何だろうこの大きい子供。
何とも思ってないなら、こっちを見て言えばいいだろうに…なんて思いながら苦笑い。未だにそっぽを向いているゼロスの頭に手を乗せて、そのままワシワシと撫でてやる。
「よしよし」
「……なに」
「いや別に。お前さ、意外に可愛いところあるよな」
「…うっせーよ…」
「ははは」
まあ、大人の男に言うような台詞じゃないんだけども。拗ねているゼロスはまるで捨てられた子犬のようで。流石にそろそろ可哀想になってきたので、助け船を出してやることにする。
「なあ、しいなー!ゼロスが寂しいから構ってくれってさー!」
「ばっ、お前何言って……!」
その優先順位、異議あり
(命令です。ただちに旦那様を構いなさい)
(ああ、ちょっと待ってな。もうすぐ寝ると思うから)
(……普通に返答すんのかよ)
(ははは、良かったな)
(…余計なお世話だ)
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管理人、いじけ虫ゼロス好き過ぎる\(^O^)/←
現パロで、三人は高校の時の同級生(ゼロスは3年の時の転校生)です。よって、三人共同い年。コレットやジーニアスとかも近所に住んでます。奥さんはいじけ虫ゼロスの扱いに慣れてる様子(笑)
(反転コンタクト様)
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