[携帯モード] [URL送信]
誰にも分からない(ゼロスとジーニアス)
※暗め。荒んでるゼロス注意。





初めて『テセアラの神子』を見た時の印象は、チャラチャラしていていけすかない──コレットとは正反対のヤツだった(とはいえ、この時はまだ神子だなんて思ってもみなかった。それだけ想定外だったのである)赤い髪をなびかせて、貴族の女の子達を引きつれて。こちらは放置でリフィルやコレットといった女性陣に声を掛けて。軽くて嫌なヤツ、というのが第一印象。


監視役としてパーティーに加わった時も、最初のうちは対して印象は変わらなかった。しかしなかなか口は達者な男で、直ぐにパーティーの中のムードメーカー的な存在になっていった。辛くない訳がないそんな旅の中、あまり言いたくはないけれど、ゼロスの軽口やふざけたようなやり取りに随分と救われていた気がする。そして旅を続けるうち、ゼロスってそんなに悪いヤツじゃないな、と思えるようにまでなった。こちらが慣れたのか、はたまたゼロスが丸くなったのか…それは定かではないが。



とにかくジーニアスの中では『チャラチャラしていて女好きで、人を小馬鹿にしたような態度を取るが根は悪いヤツではない』という位置付けにある。それ以上も以下も、ない筈だった。そこまで考えてジーニアスは、ゼロスを見上げる。





「なに、俺さまの顔になんか付いてんの?」

「…ううん。何でもない」





たったそれだけのやり取りなのに、無意識のうちに冷や汗が額を流れ全身に鳥肌がたった。




「…何でもねェんなら、んな熱烈に見つめるなよな〜。そりゃあカッコいい俺さまに憧れんのは分かるけどよ、男に見つめられたって別に嬉しかねェよ」

「なっ、熱烈に見つめてなんかないよ!バッカじゃないの!?」

「ったく、相変わらず可愛くねェがきんちょ…」




今此処にいる男は、一体誰なのだろう。勿論赤い髪も姿形も、本人であるがジーニアスが今まで知っていた『ゼロス』では、ない。やり取りこそ普通だが、纏っている空気が違うのだ。とてもピリピリしていて、今までゼロスと何度も接してきたジーニアスが感じたことのないものだった。何がきっかけなのかは分からないが、今のゼロスはいつもとは違っていた。


『ゼロス』は、こんなにも冷たい瞳をしていただろうか。笑っている筈なのに、何故か無機質な人形を思わせる表情。そして不意に、天使化してしまったコレットが頭を過る。




(──え、どうして…?)




今までそんなことを思いもしなかったのに、何故か今ゼロスの冷たい瞳を見ていたらコレットに似てると思った?そんなことある訳がないのに、でもどうしてそう思ったんだろう?神子同士であるが故に、何か似通ったところがある…?




「──ねえ、ゼロス」

「なーによ」

「今、何考えてるの」

「……」




ゆっくりと薄ら笑いが、消える。
恐怖で身体が震えるのに、青い瞳から目が離せない。恐いぐらいに透き通っていて、無機質な宝石のようで…凄く綺麗だと場違いなことを一瞬だけ考えた。




「それ、どういう意味?」

「…やっぱり、いい」

「……変なヤツ」




気付いてしまった。
この男は最初から仲間のほうを見て一度も会話をしていないのだということを。目を見ないということではなく、一緒に会話をしていてもどこか違うほうを見て話をしていたのだ。ゼロスが離れていったあとも、暫らく身体の震えが止まることは無かった。




あなたは、一体誰を見ているの?





(反転コンタクト様)


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!