神経質なだけです(ゼロスとリーガル)
バタン。
ふと、控えめに扉が閉まる音に目が覚める。暗闇の中、目を凝らすとそれは本日同室であるリーガルで。それを確認すると、ふあ、とゼロスは欠伸をして起き上がった。それに対して軽く目を見開くと、青い髪の男は申し訳なさそうに表情を変えた。
「済まない。起こしてしまったか…音には気を付けていたのだが」
「いやいや、そんなに五月蝿かった訳じゃねェよ。ただアレだ、目が冴えた」
「………済まない」
「だから別にいーっつーの。俺さまってホラ、神経質だからさァ」
「……そのようだな…」
「あ、逆効果?」
「……」
そのままバツが悪そうに黙ってしまったものだから、こちらもどうしたら良いか分からなくなる。コイツは真面目過ぎてどう接したら良いのかわかんねェ…というのがゼロスのこれまでのリーガルを見てきた上での見解である。あまりにふざけた態度を取れば、怒ってしまいそうなタイプなのだ。まあまだ其処まで長い付き合いではないので、これから先もしかしたらもっと上手い接し方が見つかるのかもしれないが…野郎との接し方なんてどうでも良いしなあ…というのも本音の一部。しかし今は仲間なのだから、それなりにコミュニケーションは取っておいたほうが後々色々都合が良い、というのも本音の一部で。
「ま、まあ…アレだ。俺さまのクセみたいなモンだから気にすんな」
「…ああ」
悩んだ末にゼロスは、話題を変えてみることにした。
「ところでリーガルの旦那はさァ、夜の散歩にでも行ってきた訳?」
「…まあ、そんなところだ。少し外の空気を吸いに」
「へえ〜。でも外メッチャクチャ寒くねェ?」
「いや、そんなことはないぞ。それなりに着込めばな」
よく見えなかったが、穏やかに笑った気配がする。何となく和やかになった空気にゼロスは少しホッとした。
「……以前はよく、アリシアと二人で仕事の息抜きに散歩に出掛けたものだ」
「…へえ」
「お互いに、染み付いた習慣というものは中々抜けないものだな」
目が暗闇に大分慣れてきた時に見えたのは、そう言って苦笑いを浮かべるリーガルの姿。
「…そうだな。ま、俺さまの場合は習慣って言ったらいいか分からねーけどな。モテる男は辛いぜ、ってか」
「…」
ゼロスの皮肉に、更に苦笑いを浮かべる。そんなリーガルを見て、ふと先程の会話に出て来た名前が頭を過った。
『アリシア』。
リーガルの最愛の人だった…らしい。『らしい』というのは、話を聞いただけで詳しくは知らないからだ。そしてプレセアの妹で…もうこの世界の何処を探しても居ないその少女。その時がくるまでは、きっと幸せだったんだろうと何となくだがゼロスは思った。リーガルは真面目だから、きっと誠実な付き合い方をしたんだろう。いとも簡単に想像が付いて、思わず笑いそうになる。
「──なあ、俺さまはアリシアちゃんの顔を知らないけどよ。アンタが惚れたんだから、きっと可愛い子だったんだろうな」
柄にもない台詞にゼロスが『あ、』と気付いた時には時既に遅し。その言葉に驚いたように目を見開いて。それからそっと目を細めて、リーガルは口元を緩めた。
「…フフ」
「……何よ?」
こちらに返ってきた不機嫌そうな声に、リーガルは直ぐに謝罪しこう続けた。
「いや、そう言って貰えて素直に嬉しいのだ。ありがとう」
「……あっそ」
赤毛の神子は照れたような、拗ねたような声色になる。意外に優しく、そして可愛らしいところもあるのだなとリーガルは微笑んだ。バツが悪くなったゼロスが布団を頭から被ったのは言うまでもない。
長年の習性
(そう簡単に、抜けるものじゃないけれど)
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ゼロス+リーガルさんです。
いやあ、難しかった…(苦笑)
最初に考えてたのとはちょっと違う話になったなあ。考えてたより明るくなりました。リーガルさんはオトナの包容力有りで、ゼロスにはない魅力があって好きです(笑)
(反転コンタクト様)
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