現実にしませんか(ゼロ→(←)しい)
※世界統合後
世界が統合されてからの忙しい日々の中で、久々に出来たポッカリと空いた時間。その貴重な時間を使ってミズホの里へしいなの顔を見にやって来ていたゼロスは、縁側に腰掛けながらお茶を啜っていた(もちろんしいなが淹れたものである)。
「あー…生き返るわー…」
「アンタにしちゃ随分発言が爺臭くないかい」
「仕方ねェだろ。…ホントにそう思ったんだから」
「ったく、お茶ぐらいで大袈裟なヤツだね」
隣に居るしいなが、仕方ないヤツだと言いたげに苦笑いを浮かべる。それを横目で見てから、そのまま目線を庭に移した。縁側、お茶、そして傍らにあるお茶菓子…自分が暮らしている場所ではまずあり得ないシチュエーションだ。しかしそれが妙に所帯染みていて、あまり自分が経験していない場面だというのに何故か落ち着くのだ。そのことが可笑しくてつい、口角が上がってしまう。
「……何笑ってんだい。変なこと考えてんじゃないだろうね?」
「んーにゃ?なんか平和だなあ〜と思いまして」
「ああ…まあ平和で結構じゃないか。それに、明日からまた忙しいんだろ?今日くらいゆっくり休んだってバチは当たらないサ」
「きゃー、しいなサン優しーい。最初はあんな激しく追い出そうとしたクセに…あだっ!」
「アンタがいきなり連絡も無しに来るからだろ!それでもお茶が出ただけ有り難く思いな!文句があるなら今すぐ出てって貰うからね」
「いやあ文句だなんて滅相もない!しいな様の美味しいお茶を頂けて、わたくしゼロス・ワイルダーは幸せをビシバシ感じております!」
ああ恐い。腕を組んで睨むなよ、と少しばかり引きつらせた満面の笑みのままゼロスは心の中でごちる。ちょっとしたことですぐ飛んでくる拳。今日はまだまだ和んでいたいので、あまりダメージは受けたくないのだ。とにかく今は謝ってでも、この場に留まらせて頂きたい。
(……アレ)
そこまで考えてふと、気付く。
なんだかここまでのやり取りが、熟年夫婦みたいな感じではないかと。勿論ゼロスは未だ結婚したことはない為、熟年夫婦というのが実際どういうものかは分からないが、何となく自分がイメージしている感じに近いのではないかと思ったのだ。奥さんが淹れたお茶を縁側で飲みながら他愛ないもない会話をする…ミズホの一般的な家庭ではよくある光景なのかもしれない。
(…………。)
そう考えると何だか急にこそばゆくなってきた。しいなをちらりと見れば、もう先程のことは怒って居ないのか呑気に『今日はあったかいねえ』なんて言っている。それに対して『そうだなー』と返しながら、茶菓子を噛った。んん、これが幸せってやつなのか。ゼロスはそうボンヤリ思う。
「……なあ、しいな」
「なんだい?」
そして少しばかりの勇気を振り絞って、今までずっと気になっていたことを口に出してみようと思った。…なんとなく今ならば、スルリと口から出せる気がしたから。
「将来どうなってんだろうな」
「何がさ」
「……俺さま達」
「なんだい、藪から棒に」
「いや、どうなってんのか気になるっしょ」
「……どうかねえ…まあ、何とかなるんじゃないかい?今から先のことを不安がったって仕方ないだろ。あたし達は世界を変えられたんだ。きっと何とでもなるサ」
(わあーしいなってば超ポジティブ〜って、俺が質問したのそっちじゃねェよ!!)
青年は思ったよりも結構な量の勇気を使ったのだが、鈍いところがあるしいなには伝わらなかったようだ。ガックリと肩を落とすゼロスにしいなは不思議そうに首を傾げた。いや、そんなところも可愛いけどだなあ…
「……オーケーオーケー。遠回しに言った俺さまが悪かったわ」
「?」
「今から俺さまが言うこと、あんまり気にしないで良いから黙って聞いとけよ」
「ゼロス?」
『気にしないでくれ』は今現在はだ。何て言ったってこっちの一方通行。しかしまだまだ時間はたくさんある。鈍感なヤツがこちらの気持ちに気付いてくれた時に、じっくり考えてくれれば良い。
「もし俺が結婚したらさ」
「あ?ああ…」
きょとんとしたしいなに構わず、続ける。
「暇があったらこうして縁側で奥さんが淹れた茶を飲んで、くだらない会話して。そんで、庭で遊ぶ子供を二人で見るわけ。あっ、子供は二人ぐらいが良いなー」
「へえ」
「んで、俺さまは超幸せ〜な顔して笑ってんの。何つーかこう、今まで生きてて良かったーみたいに思う訳。死ななくて良かった。コイツと逢えて良かったって実感して、涙が出るくらいにな」
「…アンタも結婚、ちゃんと考えてるんだねェ。ちょっと見直したよ。奥さんも幸せ者だと思うよ」
穏やかに笑うしいなを見て、ゼロスは目線を反らして頬を掻く。
「……ま、その奥さんってのお前なんだけど」
「へ、」
「………」
「……」
「…」
「…」
暫く互いに無言になる。
そして漸く理解したのか『き、急に何言ってんだい!』と顔を赤くしたしいな。ああ、その反応には満足だ。にやにやしながら、ゼロスは立ち上がる。
「ま、ただの将来の夢だから。忘れて良いぜー」
「なっ…」
真っ赤な顔で、パニック状態になり口をパクパクさせるしいなに笑って、背を向けて歩き出す。じゃあなーとヒラヒラ手を振りながら(流石に恥ずかしかったのか、しいなのほうに振り返れなかったが)。
(いい加減気付けよな、アホしいな)
「ただの夢です、忘れてください」
(わ、忘れられる訳ないだろ!!)
(反転コンタクト様)
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遠回しにプロポーズ。
本当は最初に考えた時、クラトスルートでもっと切ない感じでした。が、妹に幸せな話にもなるんじゃないと言われて気付いたので、普段より甘めな話になりました。
基本ゼロス関連は悲しかったり辛かったりする方向に考える頭を何とかしたい。ゼロスを幸せにし隊!←
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