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お世辞でもね、嬉しいよ(ゼロしい)
※ロイド達と出会う前の話。
※捏造注意。





「ハァ!?なんでアタシが…!」

「まァまァまァ、良いじゃねェか。せっかくのパーティなんだ、人数は多い方が良いし〜」

「‥フン。それはどうせ取り巻きの女の子の数の話だろ」

「あ、バレた?でひゃひゃ」

「言っとくけど、アタシはその中には入らないからね!勝手にカウントしないどくれよ!?」


(わーってるよ)
(それでも良いから、さ)


しいなから目を反らして、空を見上げながらそう言ったゼロスを、何だか無下に扱えなかった。



* * * * *


ゼロス・ワイルダーの誕生日パーティ。"神子"なだけあって、とてつもなく盛大な式典である。



(…う…やっぱり帰りたい…)



煌びやかな貴族達が優雅に談笑したり、ダンスをしていたり。テーブルにはこれでもかと言うぐらいに豪華な料理が並んでいる。貴族の女の子達に囲まれて鼻を下を伸ばす赤い髪のアイツはあんなにアホだけれど、アイツも上流階級な家柄なんだった、と改めて自覚する(常日頃の振舞いからはそんなこと微塵も感じさせない)

よくよく考えれば…否、考えなくても場違いだ。今すぐにでもミズホの里に戻ってしまいたい衝動に駆られる。


───それに、

…としいなは自分の服装を見て思う。ゼロスからパーティ用にと貰ったドレス(ゼロスに任せると変なものになりそうだったので、自分で選ばせて貰った)。そりゃあこういう場なのだから、こういう格好をしなくちゃいけないのだとは分かっている。でも、


(こんなの…アタシには……)



キラキラしたもの。
ふわふわしたもの。
可愛らしいもの。


そういう"女の子"が好きそうな物に、本当は憧れていた。でも自分からは遠過ぎるのだ。似合わないと、自分でも分かっている。分かっている。自分がそういう"女の子"には、程遠いことぐらい。



(…は、柄じゃないね)



慣れない場所に居るせいで、何だかいつもの調子が出ない。此処の空気にはどうしたって溶け込めないのだ。

ゼロスには悪いが、もう帰ろう。
扉を開けて広間を後にした。



* * * * *



「帰っちまうの?」




廊下に出ると、後ろから見知った声を掛けられた。振り返れば、先程まで女の子に囲まれてデレデレしていたアホ神子。パーティ仕様の服装が、認めたくはないが凄く様になっていた。それと自分を無意識に比べてしまい、また気持ちがしぼんでしまう。



「ああ、そうサ。アンタには悪いけど帰らせて貰うよ」

「せっかくの盛大なパーティだぜー?もっと楽しんでけよ」

「………」



盛大なパーティだから帰りたいのだ、とは口に出せなかった。
グッと口に力を入れて、身体をゼロスから反らした。



「…なんでアタシを誘ったのサ」

「?」

「最初にも言ったけど、アタシはアンタの取り巻きじゃないんだ。アタシなんかを誘わなくても、他にも女の子はいっぱい居るだろ」

「…オイ、」

「だから、無理矢理それにカウントするのはやめとくれ…!」

「オイ、しいな!!」



思い切り肩を掴まれて、振り向かされた。驚いて見上げれば、ゼロスは少しだけ怒っているような表情を浮かべていた。



(…最低だ、アタシ)



せっかく招待してくれたのに。
勝手に落ち込んで、勝手に怒って。しかも八つ当たりだなんて…
ごめ…ん、と絞りだすように言うと、ゼロスはため息をついた。



「何ヘソ曲げてんだよ」

「……」

「俺はしいなに来て欲しかったから誘ったんだぜ?最初に言ったよな?それでも良いって」

「……」

「お前を取り巻きだなんて思ったことないっつーの」


ほら、せっかくのドレス汚れんぞなんて言いながら袖でゴシゴシとしいなの顔を拭う。それで気付いた。今自分は泣いてるんだと。


「…そんなに擦ったら化粧落ちてアンタの服が汚れるよ」

「俺さまのは良いんだよ。…ってかお前化粧してたの?普段通りだから気付かなかったー」


ボスッ。
いつもより弱く胸の辺りを殴る。

「…殴るよ」

「だから殴ってから言うなっつーの。てか今のは誉め言葉として受け取っとけよ、化粧しなくてもそのままで十分って意味だろ」

「…ばーか」


顔を見合わせて、どちらともなく笑い合った。嗚呼、なんだか泣いたらスッキリした。落ち込んでるのが馬鹿みたいになってきた。


「そーそー。しいなはそうじゃなくっちゃな」

「…ああ」

「せっかくおめかししたんだ。此処は一つ、テラスで私めと一緒に踊りませんかお嬢さん?」


その芝居じみた振る舞いに、プッと噴き出す。乗ってやるのも、たまには悪くないかもしれない。



「……お手柔らかに頼むよ」



そっと手を差し出すと、手の甲にキスをされた。流石にそこまでは許していなかったので、調子に乗るんじゃないよアホ神子!!と一発殴っておいた。



(でも、踊る相手がアタシなんかで良いのかい?)
(申し分ないでしょーよ。そのドレスも似合ってるし〜)
(ばっ、馬鹿言うんじゃないよ!そんなこと言ったって何も出ないからね!)
(だっ!!だからいちいち殴んじゃねーよ暴力おん…あだっ!)
(殴るよ!!)







(そういえば〜、俺さままだ聞いてないんだけど)
(何をだい)
(なーに白々しいこと言ってんのよ、しいな。今日は何の日か知らないわきゃねーでしょうが)
(さてね)
(なっ、すっとぼけんじゃねーよ!……ま、まさか本当に知らねーの…?)
(ミズホの里の記念日じゃないかい?)
(何でお前んとこの記念日をワイルダー家が盛大に祝わなきゃいけねーのよ!だーッ、俺さま傷付いたぁぁあ!)



冗談。
おめでとう、ゼロス。



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TOSのゼロスとしいな!
個人的にこの二人の微糖な関係大好きなんですvv

王道だから、頑張って探さなくても直ぐに素敵な作品に出会えるのが幸せ\(^▽^*)/

初書きなんで、キャラが違ってたらごめんなさい…

(Title:にやり様)


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