絶対幸福論(清鈴+ガッシュ)
ああ幸せ。
私は貴方の側に居られるだけで、それだけで充分なの。
秋も深まった11月上旬。来たる期末テスト対策の為に高嶺くんの家に行く約束を交わしていた。
「こんにちはー!高嶺くーん!」
「おおっ、スズメではないか!よく来たの!」
「フフフ…こんにちは、ガッシュくん」
「お、来たか。上がってくれ水野」
意気揚々と廊下から駆けて来たのはガッシュくん。とっても優しい子だ。そしてその後に顔を出したのが───
「ごめんなさい高嶺くん。テスト前の大事な時間なのに…」
「イヤ、別にいいよ。教えるのは訳ないし…何より自分にとってもいい復習になる」
「そっか…ありがとう!」
そう、クラスメイトである高嶺清麿。頭脳明晰 成績優秀、そして何より…
水野鈴芽の、好きな人である。
「ヌウ、バルカンに貼り付けようと思ったこの紙が上手く切れぬのだ…」
「えっ?どれ?」
「コラ、ガッシュ。勉強の邪魔をするな。遊ぶんならウマゴンかお袋が居るだろ」
「ヌゥゥ!!何も邪魔しようとは思ってないのだ!ただ紙が…紙が切れぬだけなのだー!」
「ええーい騒ぐな!それが邪魔してるって言うんだよ!」
「た、高嶺くん大丈夫よ。勉強ならすぐに出来るわ!だって高嶺くんは、教え方がとっても上手だもん」
「それに華殿は買い物に行って留守だし、ウマゴンではハサミを持つ事も出来ぬ!!お願いなのだ清麿!邪魔はしないのだ!せめて、せめてこの紙を切ってくれー」
「お願い高嶺くん!」
(…水野まで…)
こうなったらもう手遅れだ。一瞬外に居るウマゴンが不憫に思えたりしたが、勉強を一時中断するしかない。つーかお袋こんなタイミングで買い物かよ!
ハア…と盛大に溜息をついてから、泣いて騒ぐガッシュの手からハサミと紙を取り上げる。ご丁寧に切り取る形が描いてあったのでその線に沿り、星や丸など様々な形に切り分けて、ポイッと渡してやった。確かにその線に沿って切るのは小さい子供には難しいかもしれない(変な所にこだわるし、変な所で不器用だからな)
「ホラよ。よしガッシュ、もう邪魔しないな?」
「ウヌ!ありがとうなのだ清麿!」
「すごいわ高嶺くん!あまりの素早さに私見取れちゃった!」
「わかったわかった。ホラ、じゃあ数学の続き…」
「だがやはり…此処に居てはならぬかのう…」
「ダメだ」
「ヌゥ!ヌゥゥ!!即答なんてひどいではないか!!」
「何を言ってるんだガッシュ。バルカンにそれを貼り付けるんだろ?ここで貼り付けられるのは恥ずかしいってさっきバルカンが言ってたのが聞こえなかったのか?」
「そっ、そうなのか!?それなら此処では出来ぬ…」
「ハッハッハ、凄いぞガッシュ!早く貼り付けてバルカンをカッコヨクしてやれ」
「ウヌ、わかったのだ!よ〜しバルカン、早く貼り付けてカッコヨクなろうぞ!」
悪く思うな、ガッシュ。
瞳をキラキラさせて駆けていく背中を見送りながら、心の底で謝った。まあ何はともあれ、これで集中することが出来…
「……水野?」
「えっ!?ど、どうしたの?高嶺くん」
「…いや、」
思わず釣られて頬が染まる。視線を戻した時、微かに頬を赤らめたような鈴芽と目があったから。何をそんなに慌ててるんだ?何か顔に付いてるんだろうか。
(高嶺くんと、ふ、二人きりだなんて…どうしよう変に緊張しちゃう)
「そんなに見られると、流石に照れるんだが…」
そんなつもりはなかったものの、どうやらジッと見つめてしまっていたようで。少し困ったように眉を歪めた高嶺くんにハッとして、慌てて手を振った。
「ごっ、ごめんね!早く勉強の続きしようよ高嶺くん」
「ああ」
まずは2次方程式かな…なんてパラパラ教科書をめくる音がやけに大きく聞こえる。教科書に落とした視線は真剣そのものだ。だがその時ですら私は緊張して、徐々にに大きくなる心臓の音を聞いているだけ(ボーッと彼の横顔を見ながら、前髪長いなぁ…なんて思ったり)
「いいか、水野。まずはここにこの公式をあてはめてみろ。それで上手くいくハズだから」
「う、うん…!」
いけないいけない。せっかく高嶺くんが教えてくれるんだ、しっかりしなきゃ。真面目に聞いてなきゃ…
(それに好きな人の前でくらい、少しは良い所を見せたいというのもあるのだ)
「そう。その公式をここにあてはめて…」
「えーっと…こう?」
「ウン。あとは計算すれば答えは出るハズだ」
高嶺くんと居ると起こる、たくさんの不思議。
まず1つ、勉強がまるでゲームみたいにスラスラ解けていくこと。例えそれがどんなに素晴らしい教師に教えて貰っているよりも、どんなにわかりやすい授業よりも。理解するのに時間を要する自分がこんなにスラスラ解けるなんて、奇跡に近い事なのだ。
「やったわ、全部出来た…!」
「よし。これでテストもバッチリだ、よくやった水野!相変わらず物覚えが良いな」
「──違うよ、高嶺くん」
「…え?」
(そう、違う。そうじゃない。これは高嶺くんが使った魔法みたいなものなんだよ?)
キョトンとした高嶺くんにそう言いたかったけれど、なんだか恥ずかしかったからやめた。私の気持ちが気付かれないような言葉に、たくさんの気持ちを込めて
「高嶺くんの教え方が上手いから、だよ」
「そ、そうか…?」
「ウン。絶対そうよ」
「ま、まぁ…褒め言葉として有り難く貰っとくよ」
またコイツは恥ずかしい事を…と言いたげな顔をして高嶺くんは笑う。所謂、困ったような笑顔だ。
そんな表情さえも大好きだと思ってしまう私は、どれだけ貴方を好いているのだろう。
高嶺くんと居ると起きる不思議のもう1つは、
(ねぇ、もし私がこんな事を言ったら貴方はどんな顔をするんでしょう?)
(もしかしたら、困った顔しちゃうかな?)
高嶺くんが居るだけで、私はとっても幸せなんだって。
難しい勉強も、憂鬱なテストも。
(不思議。楽しくなっちゃうんだ)
花が綺麗な春も海水浴の夏も
(みんなでいっぱい騒いで、)
美味しいものいっぱいの秋も、寒さが辛い冬も
(とっても幸せ)
1年中幸せなのはそう。他の誰でもない、高嶺くんのおかげだから。
「フフフ、幸せ」
「?」
そういえばいつも水野は幸せそうだよな、何でなんだ?なんて聞いてきた好きな人にふわりと微笑む(でも、まだ理由は教えてあげないの)
まだ口に出すのは恥ずかしいから、もう少し待っててね。
(いつか私が貴方に想いを伝える、その日まで)
待っててね王子様。
(いつか貴方に微笑むの)
Fin
─────────
[金色のガッシュ!!]の清麿とスズメ。
な、長くなっちまった…笑 ガッシュがかなり自由に動いちゃって;
管理人は清鈴派です^^
清麿×鈴芽というより清←鈴な感じで。
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