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せめて、今だけは(ナジャリア)



(私は竜族で貴方は獣人と人間のハーフ、)
(それはどうしても越えられぬ壁でした)





「どうしました、リ・ア?」

「…ナジャ、」




ふわり、と。
肩に温かい物が掛けられた。なんだろうかと手で探ると、どうやら上着のようで



温かくて、優しくて。
ほんの少し目の前が歪んだ。




「…温かい…」


「当たり前です。竜族とはいえ女性に寒い思いはさせられないでしょう?」


「貴方らしい理由…感謝しますわ」


「礼には及びませんよ。当然の事をしたまでです」




いつものように降り注ぐ温かな声に、少しだけまた胸が痛んだのは秘密。




柔らかな物腰、気遣い。
どれも私にはないものばかりでいつからか憧れていた。それは当たり前だという彼が、凄く凄く羨ましかった。





(そしてその憧れは、いつしか淡い淡い恋心へと)





以前羨ましく思う事を伝えた事があった。すると彼はふわりと微笑んで、「私は貴女が羨ましいです」ととても優しい瞳をこちらに向けたのだ。






(…何故ですの?)
(それはきっと、貴女と同じ理由ですよ)
(同じ、理由…)
(ええ、そうです)




自分とは違うものを持っている。
だからこそ惹かれ合うものだ、と。






(物腰が柔らかくなくても構わない。貴女にはその芯の強さと不器用ながらも優しさがある。貴女らしくて素敵じゃありませんか)





自分らしくて良い、そのままが素敵なんだ。そんな事を言ってくれたのは貴方が初めてだった。




貴方の言葉に救われて、今があるのに。





「今夜は冷え込みますね…そろそろ部屋に戻りましょう、リ・ア」


「──ナジャ、」


「…?」





どうして?





「私はずっと…貴方と共に在りたいと願うのは罪なんですの?」


「…どうしたんです、リ・ア」





どうしてこんなに胸が苦しいの?






「私は竜族で…この世界のどの生き物よりも長く生きる種族です。…でもナジャは違う…!」


「…リ・ア…」


「…私はずっと…ナジャと共に在りたいのに…っ、」





一度吐き出してしまえば、それは止まらない。
蓋を外したかのように溢れて、零れて





どうして私は永く生きる竜族として生まれたのだろう



どうして彼は私と同じ種族に生まれなかったのだろう




(こんなに辛いのに、何故貴方を好きになってしまったんだろう?)




竜族としての誇りはあった。だけど、(ごめんなさい。貴方が素敵だと言ってくれたのに私は───)




「──リ・ア、こうしませんか?」




"互いに課題を"




近くで聞こえた声にハッと気がつけばいつの間にか腕の中で。そして見上げれば甘くて優しい色をした瞳が私を捉らえて離さなかった。




「確かに私は貴女が言った通り、貴女より先に命を終えるでしょう。だけどリ・ア、貴女にはまだまだたくさんの未来がある…私は貴女に課題を出します」



たくさん色んな物を見聞きして下さい。私が見れなかった未来を…そして聞かせて欲しい。貴女がきちんと天寿を全うして、私の元へ来るまで…それが私からの課題です。そして約束しましょう、貴女が寂しくないようにずっと傍で見守ると。




「私にはそれ程永い未来はないですが、"今"は在る。私は"未来"に、リ・アは"今"に…」

「…私も…?」

「ええ」





(遠い未来、きっと誰もが描いた平和な世界は実現しているんでしょう。伝言役を引き受けてくれますか?)






貴方は狡い人だと彼女は笑った
(私を好きでいて下さい)






─────
WDのナジャ×リ・ア
アニメ設定。この二人良いよね^^

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あきゅろす。
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