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きら きらり(摂薄)




もうじき夜明けを告げる光が遥か彼方上空、どんよりとした灰色から差す。





冬の朝方、澄んだ空気。たくさん肺に吸い込み吐き出すと、あまり良くなかった気分も少しは和らいだ気がした。





吉原に売り飛ばされた身。今でこそ太夫という地位に着いているけれど。多少不便な事はあるがそれは慣れっこ。昔に比べれば不自由なく生活していると言っても大袈裟ではないから。







(───あ、)







朝霧の中きらりと見えたそれは相変わらず。幼い頃より見慣れた等身。随分とまあ派手な色だこと。サンサンと地上を分け隔てなく照らす太陽のような、鮮やかな色。








(アイツ、こんな時間に何しに来たの)






ふっと息を吐く。それは直ぐに白く天高く上って消えて、冷たい空気が肌を刺して。



何でもない事なのに自分の鼓動は緊張を告げる。気付く訳ないのに。こんな朝方に景色を見ている、アタシに。





不意に目線を下に移動させると。こんな偶然ある訳が無いのにあろう事かあの二枚目の表情を柔らかく綻ばせたアイツと目が視界に入って、きて







「よォ」



刹那。




身体中の血液が沸騰したのかと思う程に熱くなる。まさかアイツ、毒とかまいてるんじゃないでしょうね。そんな頬に冬の空気の冷たさが気持ち良かった。






「どうなされたんです?こんな夜更けに」



「特に大した意味ァねェよ。ただちィっと寝付けなくて早起きしちまっただけの話だ」



「アラアラ、それでこんな所まで?」



「まァな」





天下の太夫に対して、こんな馴れ馴れしく親しげに。病気を移すなんてアンタぐらいだわ。とうの昔に忘れたとばかり思っていたこの感情。太夫ともあろう者が今更引っ張り出されるなんてどうかしてる。






「なァ、」






真っ直ぐ。
この街で色男と呼ばれているらしい男の眼が、射抜いて。







「あのよ、そのうち…」





俺のトコ来ねェか。





馬鹿げてる。本当どうかしてる。その金色の髪の男は、此処から出る理由のないアタシの"理由"になると言ったんだから。




その言葉を嬉しく思った。驚かなかったのはどこかで、言われると解っていたのかもしれない。





でも、今直ぐになんてなんだか釈。アタシは意地の悪い女だから。





「アラアラ。摂津様ともあろうお方が…寝ぼけてるんじゃございません?」



「…寝ぼけてンなァそっちだろ」



「ウフフ、そうかもしれませんわね」





腑に落ちない顔の幼なじみに、ふわり。





「でも一応、考えておきますわ」





柔らかな笑みを浮かべて。




そのあとはもう幼なじみ故ってやつだ。アイツとアタシはツーとカー。アタシが言った意味を全て悟って呆れたように微笑む奴が眼の前に。





「は、相変わらず大したタマだ」



「アラアラ、貴方こそ」




まァいい。今直ぐなんてどだい無理な話だ。直ぐにンな事になったら江戸中が女の子達の涙で水浸しになっちまわァ。





なんてたわけた事を飄々とした顔でぬかしたアイツに、お手玉を1つぶつけてやった。





「痛ッ…何しやがる!」


「アラアラ。そんな顔しているからお手玉が当たりに行きましたわ」



「顔カンケーねェだろ!?生まれつきなンだよ!!」





(それは今度此処へ来る理由にしてあげる。ちゃんと返しに来なさいね)




Fin




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サムうさの摂津と薄雲。

この二人好きです^^

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あきゅろす。
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