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今夜はすき焼きです(志乃とミツキ)



「ねえ、お母さんはお父さんのどこを好きになったの??」



15歳になって、一人暮らしを始めた娘が久しぶりにこっちに帰ってきた。だから今日は久しぶりに奮発して、ちょっと豪華にすき焼きにすることにした。


ちなみに旦那様は現在、うさぎ道場で稽古中である。帰ってくるまでに少し時間はあるけれど、帰宅したら直ぐに美味しいご飯を出してあげたい。なので準備は早め早めに。


…とはいえ今日はミツキが帰ってくる日。事前に娘から知らされていたので、なるべく早く帰ると出掛ける前に言っていた。もうすぐ慌てて帰ってくるだろう(そんなに急がなくても大丈夫なのに)


『疲れたでしょ?休んでて良いよ』と言ったけれど、手伝ってくれると言うので、お言葉に甘えて娘と二人で立つお台所。ネギを切ったり、白滝を茹でたりして下準備している時に、冒頭の台詞が娘の口から飛び出したのだ。



「ねえ、お母さんはお父さんのどこを好きになったの?」

「…ん?」

「…え、あっ、いや別に変な意味じゃないの!ただちょっと…ほら、気になっただけようん」



自分の言ったことにハッとしたように慌てて両手をブンブン振る。心なしか、顔が赤くなっているように見えて…そんな娘を微笑ましいと思いながら、上手く伝える為の言葉を探した。



「うーん…そうだなあ…」



旦那さまのどこを好きになったか。よく考えてみれば、それはたくさんある気がするけれど。



「…えっとね、いつも一生懸命なところかなあ」

「そっか…確かにお父さん、何に対してもいつも一生懸命だわ」



うんうん、と頷くミツキに頬が緩んだ。ああ、やっぱり似てる。優しいところも、一生懸命なところも。



「えへへ、ミツキも一生懸命だよね」

「えっ、アタシも?」

「うん。ごっちんに似てるよ」

「お、親子なんだから当たり前じゃない…ていうか、アタシなんかよりお母さんのほうがもっと…」

「?」

「な、何でもない!それよりホラ、すき焼き!お父さん帰って来ちゃう!」

「あっ、そうだった」

「ただいま帰った!!」

「…噂をすればだわ…」



そう言った瞬間、玄関から聞き慣れた声。あーもー、お父さん張り切って早く帰って来過ぎ!と言いながら玄関まで掛けて行くミツキに笑って、調理を再開する。



「おかえりなさ…えっ、正雪おじさん!?」

「よっ、邪魔するぜ。久しぶりだなァ。暫く見ねェうちに随分べっぴんさんになったじゃねェか」

「久しぶりに道場に顔を出してくれてな。ミツキが帰ってくる話をしたら、是非顔が見たいと…」

「もー、そんなこと言って。ご飯ご馳走になる気なんでしょ」

「…バレたか。ま、良いじゃねェか。今日は店も休みだからなァ」


笑い声がする。
台所まで近付く三人分の足音。
うーん、すき焼きもうちょっと掛かっちゃうなあ。


漸く見えた顔に、元気に笑顔を浮かべる。



「ただいま帰った」

「あ、ごっちんおかえり!お兄ちゃんいらっしゃい〜!」

「よっ、志乃。お、今日はすき焼きか…さては『摂津さんいらっしゃい宴会』でも開くつもり…」

「違うよ!」

「即答かよ!」



ダメージを受ける兄に、それを見て笑う娘。旦那さまは優しく微笑んでいる。



「ごめんね、まだすき焼き出来てないんだ」

「む、良い良い。そこまで急がずとも大丈夫だ。ゆっくり作ると良い」

「えへへ、ありがとね!」



はいはい、じゃあ正雪おじさんは客間、お父さんは着替えて来て!二人の背中を押して連れていくミツキにお願いね、と声を掛ける。グツグツと煮える鍋を見ながら、今日の食事はいつもより美味しくなるなあ、と幸せを感じるのだった。



(ミツキ、お前好きなヤツでも出来たンじゃねェの?)
(えッ!?な、な、な、何言って…!)
(俺は女の子の変化にゃ勘がよく働くのよ。どっかの誰かと違ってな)
(え、だ、だってそんなの…)
(大丈夫大丈夫、伍助ちゃんにチクったりしやしねェよ。色恋を覚えるとな、女の子は可愛くなるモンなんだぜ)
(もう!からかわないで!!)



大声を上げてしまい、父親が客間に血相を変えて飛び込んできたのは言うまでもない。




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久しぶりにサムライうさぎの文を書いてみた。管理人の趣味で、摂津さんが登場しちゃいました←

お母さんからの言葉を聞いて、色恋の参考にしようとするミツキ…をからかう摂津さんと鈍い伍助。こんなみんなが理想だ(*´▽`*)

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