※狂気科学者(シュタメデュ)
初めて会った時から。
きっとそれは始まっていたんだわ。
「貴女が魔女、だなんて。最初から解ってましたよ。何が目的なのかは知りませんがねぇ」
本当に意地が悪いのね。
じわり じわり
まるで蛇が蛙を追い詰めるようにゆっくりと。この男に追い詰められていた。もう捕まっていたの。でも私も魔女。貴方は素敵な狂気を持っているけれど、黙って捕まって研究材料にはなりたくないの。
(ましてやバラバラになんて黙ってされる訳がない)
ほら、私の心臓がとんでもないぐらい脈を打つ。互いに譲らない。切羽詰まった緊張感。興奮してる癖に。血液が全身を巡っても何故か冷えたまま。
ほら、私の身体をバラバラにしたいんだったら捕まえてみなさい。欲しいんでしょう?狂気に染まった自分が。
えぐって砕いて、肉をグチャグチャにして。骨を軋ませて血を浴びる。
きっと狂気に塗れた人には最高のショーでしょうね。
私と貴方はどこか似てる。だから興味があった。
でもだからこそ解り合えなかった。きっと似て非なるもの。
貴方となら最高の世界を作れると思った。それだけは心残りで本当の事。残念で仕方ないけれど。
(でもそんな小さな事すぐに忘れるわ。何故なら貴方は今此処で、)
「死んでしまうからよ」
「へぇ それは残念だ。俺も貴女に興味があったなぁ」
「…可愛い子。なあに?今更。この期に及んでバラバラになるのが恐いの?もう遅いわ」
「それはそれは」
「死んでから後悔しなさい。魔女である私の誘いを断った事をね」
「やれやれ…弱い奴ほどよく喋るとはよく言ったもんだ。───お前こそ後悔しろ。俺に喧嘩を売った事にな…」
キリキリ。
頭にあるネジを回す音がやけに大きい。愉しそうに狂気に歪んだ顔を見て、自然と口角が釣り上がった。
(そう。もう終わりにしましょう)
狂気を浮かべた彼の、本当の姿が垣間見えた気がした。
Fin
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