護る誓い(ハヤナギ) (助けて、) (助けて!!) いつどんなピンチになったとしても。名前を呼べば直ぐに飛んで来てくれる。 そんな漫画の中から飛び出したような私だけのヒーローに、恋をしている。 「なあ、ハヤテ」 「なんですか?お嬢様」 「……いや、なんでもない」 「はあ…」 キョトンとしているハヤテに、クスリと笑いを零した。 (ああ、なんだか) 声を掛けた理由なんでどうでも良くて。ただ単に呼び掛けて、それに直ぐ答えてくれる人が傍に居ることが嬉しかったから。 (幸せな気分) なんだか今日はご機嫌ですねと言われて気が付いた。無意識のうちに口元が緩んでいたようだ。いつもならば子供扱いするなと怒るところだが。 まあ良いさ今日は勘弁してやる。だって気分が良いのは本当のことなんだから。怒る気なんて起きやしないんだ。其処まで考えて、ナギはハヤテに背を向けた。 次に自分が発する言葉は、とても恥ずかしい言葉なんだと分かってしまったから。 「…ハヤテ、」 「何ですか?」 「お前はこの先もずっと…ずっと私の傍に居て、私を護ってくれるか?」 「はい。お嬢様のお傍を片時も離れずにずっと護っていきます」 「──…私が怒っている時も、泣いている時も、笑っている時も?」 「はい、もちろんです。お嬢様の笑顔が曇らないように、僕が一生護っていきますから」 (──ハヤテ、ハヤテ) (だいすき、だ) だから安心して下さい、という言葉は口から出る前に消えた。何故ならその言葉を紡ぐ瞬間、頬に温かな何かが触れたから。 「お、お嬢様…?」 「こっ、これはアレだホラ、お前が一生護ってくれると言うからそのお礼にだな、」 「お嬢様……」 「だっ、だからあまり気にするなっ!良いな!?」 自分を護ってくれる。 自分の傍に居てくれる。 そんな言葉を耳が認識する度に胸の辺りが苦しくなって、溢れ出した甘い感情。それに支配されてコントロールが効かなくて、ふと気が付いたら頬に口付けをしていた。恥ずかしいのもひどく赤面したのも、した本人なのだから情けない話だ。 自分のした行為に頭がぐるぐるして、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい心境になっていると。 「ダメですよ、お嬢様」 「…え、」 しっかりした声で言い放ったハヤテに、固まったのはナギ本人だ。 よくよく周りを見れば、いつの間にやら自分は壁ぎわに追い込まれていて。顔の両端には、ハヤテの腕があって逃げることが出来ない。 驚いて見上げれば、やけに真剣な色をした瞳と視線がぶつかった。急激に上がる心拍数。 「ハっ、ハヤテっ!?あのっ、これはあのっ、」 「…全く気にしないだなんて出来るわけがありません。このままじゃ僕はお婿にいけなくなっちゃいますし」 「ハヤ、テ…?」 「──お嬢様、」 (責任、取って下さいますか?) 熱を帯びた瞳で見つめられて、頭が溶けてしまいそうになった。こんな風に見つめられるのも、こんなことを言うハヤテを見たのも初めて。動揺しているうちにみるみる距離が縮まる顔と顔。 間近にハヤテの端正な顔。 かかる吐息に思考回路はショート寸前。 何も考えられずに頭が真っ白になって、ギュッと固く目をつぶった。 僕は貴女を護る騎士。 (大好きですよ、お嬢様) ───── 本当にあったことなのか、途中からナギの夢なのかは読者の判断に委ねます← 私的には現実にあって欲しいけど、後者である確率が高いです←← [前へ][次へ] |