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想い出ぼろぼろ(清鈴)
(未来設定)




ねえ、覚えてる?私達がこうして一緒に暮らす前。そう、付き合う前よ。本当に、色々な事があったよね。




「…懐かしいなぁ」

「どうした?」

「フフフ、こんなもの見付けちゃった」

「おっ、アルバムか…懐かしいな」



(ねえねえ、貴方は覚えてる?)




大きく背伸びした中学時代
ぶかぶかの制服を気にした入学式
暑さに負けそうになったプール。
友達とお菓子を交換して食べた遠足。
凍った水溜まりに凍えた冬休み前。


それからしばらくして、貴方に出会った。

ねえ、貴方は知っていますか?
いつから私が貴方を好きか。
初恋で、一目惚れだったの。
初めて会った時から大好きだったわ。


それからはずっと近くに高嶺くんが居る季節。それまでの季節より、もっと大好きになった。

高嶺くんと、友達と過ごした日々はいつまで経っても大切で、キラキラした宝物。


もちろん悲しい時期もあった。
そして辛いこともあった。
でも、後に現れた太陽が優しく高嶺くんを連れ出してくれたよね。


ありがとう、ありがとう。
今の高嶺くんが居るのは貴方のおかげだよ。
今はどうしているかしら?



写真に写った金色(こんじき)の髪を指で撫でてみる。それは無機質な紙な筈なのに、どこか温かい。

想い出のページをめくる度に幸せが滲み出してくる。緩む頬を見て、高嶺くんがデコピンをしてきた。



「わあっ」

「なんて顔してんだ、」



言葉とは裏腹に、その表情は楽しそう。なんだかくすぐったくって、私は目を閉じる。



「ガッシュくん、今頃どうしてるかな?」

「あいつのことだ、元気に跳ね回ってるんじゃないか?」

「ふふふ、そうだね」



遠い遠い国に行ってしまったあの子を思い出した。また会いたくて寂しくなることもあるが、どうしてだろう。

あの子を思い出すと、必ずほっこりと温かで幸せな気分になれる。


別々の学校だったけど、ちょっぴり大人になった高校時代。

勢い余って告白してしまった日。

そして今現在も。

大好きな人が傍に居て、一緒に過ごせてるなんてすごく幸せなこと。



なんて想い出にしばらく浸っていると、コラ、なんて言って軽く叩かれる頭。

驚いて顔を上げると、困ったように笑う愛しい人が居た。



「思い出に浸るのも良いけどな、そろそろ作業を再開したほうが良いんじゃねえか?」

「…あっ、」



ごめんなさい、と思考を中断し作業を再開させる。もうすぐ新居に引っ越すことが決まっているので、急いで準備をしなければならないのだ。


段ボールに物をしまっている時に出てきた卒業アルバム。ついつい懐かしくなってページをめくれば、手が止まらなくなっていた。



「あー…その、水野」

「?」



ゴホン。
高嶺くんが咳払いをして私を呼ぶ。不思議に思ってちょうどヌイグルミをしまおうとした手を中断させて、なあに?と近寄った。



「これ、やるよ」

「…?」



おもむろに何かを胸ポケットから取り出した。手のひらに置かれたそれを確認するべく、目線を移す───と。




「こ、れ…」

「ああ…良いだろ?似合うんじゃないかと思ってさ、」

「…高嶺くん…」




じわり。
手のひらに乗せられたそれに、思わず涙が出そうになった。


それはシンプルなシルバーリング。私の手の上でキラリと光を反射して。



「…あ、違うぞ?似合うと思ったのは本当のことだがコレはそうじゃなくて、」

「うん」

「……わかるか?」

「うん、わかる」




そこまで言うと堪らなくなって思い切り抱き付いた。彼はよろけながらも、ちゃんと抱き留めてくれた。

わかる。わかるわ。
普段天然だって言われるけれど、直ぐにわかった。

──だってずっと待ってた。夢見ていたんだもの。





(結婚しよう)




耳元で優しく囁かれた言葉は私を号泣させるには充分で。

彼の発する言葉を一言も聞き逃すまいと、私は真剣に耳を傾けた。


「──…はい」





(それは予約な。大学出たらちゃんとしたの買ってやるから)
(ううん。コレが良い)
(…水野、)
(コレが良いの)





今まで傍に居てくれてありがとう。
そしてこれからも、よろしくね。





─────
未来な同棲清鈴。
前作が微妙な出来だったので、リベンジしました。

敢えなく撃沈……っ(泣)

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