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旅立つオレの心を あなたは知っているんだろうか。






ひばりさん。名前を呼べば、返事の代わりに強く抱きしめられた。
布団の中も暖かいし、暖房の効いた部屋だって暖かいけれど、それでも一番はこの人の腕の中だと思う。暖かいだけじゃない、心地よい。大好きな場所だ。

「すみません、起こしてしまって」

「…別に良いけど。どうしたの?」

ゆったりと髪の毛を撫でながら、雲雀。その声音は普段聞くものとは到底違う優しさと甘さを含んでいて、それだけで綱吉は泣きそうになった。
けれど、それではいけない。
気づかれてはいけないのだ。彼には、絶対。ぐ、と堪える。

「何も…ただ、呼びたいなって、思って」

「可愛いこと言うね。まだ足りないの?」

くすくすと揶揄うような声音に、頬が熱くなった。
真っ暗な部屋では彼の表情は完全には分からないが、それでも、こういうときの雲雀はとてつもない色気を放っていると思う。髪から頬へと手が滑ってくる。その手つきは声と同じで、やはり優しさを孕んでいた。

「ひばりさん、」

名前を呼ぶ。
今日で、彼と会うのは最後にしようと綱吉は決めていた。
雲雀は知らないだろう。いや、知られてはならない。

「ひばりさん、」

遠く離れてしまえば、愛は終わる。
そんなことを言ったのは誰だったか。

「どうしたの綱吉。今日は随分と甘えただね」

「すみません…でも、もう一回、」

自分から唇を合わせてみせれば、闇の中で雲雀が驚くのが分かった。

「…明日に響いても知らないよ」

耳元で紡がれた言葉に、頷く。
痛みでも痕でも何でもいいから、出来るなら、明日もこの先もずっと消えないくらいのモノを残してほしいくらいだった。何でも良いから、彼を感じられるものが欲しかった。
腕の中の温もりも、優しい手も、低い声も、何もかもをしっかり記憶するために、綱吉は強く瞳を閉じる。





「きょうや、さん」





(好き、好きです、愛してます。ごめんなさい、さようなら)


両腕を雲雀の背に回し、強く抱きつく。
声にならない言葉も想いも、そうすれば全て伝わるような気がした。
















































旅行いったときの飛行機で聞いた曲から妄想してみたシリーズ一弾。
チューリップで『心の旅』
好きです、この曲。

2008.1007










あきゅろす。
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