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呼吸を止めて 出ておいで





「最後まで勝手な人」

別れの挨拶も、何も残さずに彼は消えてしまった。
どこを探してもいない、いるはずもない。何せ彼は違う世界の住人なのだから。

いつかは帰ると思っていた。そのときがだんだんと近づいていることも、知っていた。それでも心のどこかで、信じていたのだ。

まだ声も、温もりも覚えてる。分かっている。
だから悲しくなんてない。
それなのに、もう忘れてしまいそうだ。

「記憶力には、自信があるのに」


夢なら醒めてほしい。
そう思って、そこで、陸遜ははたと気づく。









「…違う、今までが、夢だったんですね」









彼と出会ったことも、あの、人ならざる者の証ともいえる銀髪も、美しい紫銀の瞳も。
全部全部、夢の中での出来事だったのだ。

思い出が、頬を伝ってぽろぽろと零れてくる。
零れれば零れるほど、今までが消えていく気がする。けれど、それを止める術は思いつかなかった。



自分は夢から醒めたのだ。たった今。
















































旅行の飛行機で聞いた曲から妄想シリーズ第二弾。

くるりの、『さよならリグレット』より望陸。いい曲です。


2008.1007





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