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ハイジは俺の言葉を一つ一つ整理するように瞳を揺らす。
そしてためらいながら、おそらく今まで聞きたくてしかたがなかったであろうことを俺に質問した。
「ねぇ兄ちゃん。どうして兄ちゃんは…母さんにとって悪魔なの?」
俺はいつかは聞かれるだろうと思っていた事だったこともあり、ためらうことなく口を開いた。
「俺が母さんが世界で一番大嫌いで憎んでいる悪魔のような男と同じ髪と目を持っているからだ」
俺が特に何の感情も出さずにそう言うと、ハイジは不思議そうな顔をした。
「何で母さんはその人がそこまで嫌いだったの?その嫌いな人って、いつも母さんが持っていた写真の人?」
「いや、写真にうつっていたのは母さんが世界で一番愛していた人だ」
ハイジは意味がわからないと言ったように眉を寄せる。
「ハイジ、前に何度も家に来ていた帽子を被った男を覚えているか」
「もしかして、あのちょっと太ったおじさんのこと?母さんの父さんだって言ってた」
「あぁ、そいつだ。俺とあの男は同じ髪と目を持っている」
ハイジはますます理解が出来ないといった顔をする。
「母さんの父さんと兄ちゃんが似てても血が繋がってるんだし変なことではないんじゃないの?」
「血が繋がっていればな。母さんとあの男は血が繋がっていない。つまり母さんにとってはあの男は義理の父親ってことになる」
俺がそういうとハイジは納得したように相槌をうった。
しかし数秒後、何かに気づいたように表情を固くした。
「まぁ…簡単に言うと、その男は母さんの事が好きすぎて母さんの婚約者を権力を使って殺し、無理矢理俺を作らせ、無理矢理俺を産ませた。
もっと言えば無理矢理俺を産ませた挙句によそに女を作って、体裁を保つ為に母さんに再婚をさせた。因みに母さんの母親は俺が産まれる前に死んでいる。
母さんはその男とよく似た俺が憎くてたまらない。だから俺は母さんにとっては悪魔でしかないんだ」
俺がそう言って口を閉じると、ハイジは呻きながらテーブルに顔をうめた。
「ご…めん…兄ちゃん、俺馬鹿だっ、ごめん兄ちゃん、何も知らなくてごめん兄ちゃん」
泣きながら何度も俺に謝罪するハイジの行動の意味は理解が出来なかったが、この時初めて俺にこの純粋で無垢な弟が愛しいと言う感情が生まれた。
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