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―side RAKUHA―


多目的ルームに足を踏み入れ一番先に視界に飛び込んで来たのは、今まさにハイジがナイフを振り上げている所だった。

ハイジが居たのが入口付近だったこともあり、直ぐにハイジを抱きとめることができ、最悪の事態を回避することが出来たものの。

あと数秒遅かったら、おそらくシンはスプラッタになっていただろう。

俺があの時エドアンを気にせず戻っていれば、と自分を酷く責める一方で、あの時戻っていればその事を一生後悔することになると、俺には何故だかわかっていた。

安心させるために後ろからしっかりと抱きしめる俺の腕にしがみつき、ハイジは壊れたように泣き続ける。

ハイジを宥めながら、俺は視界の隅にエドアンがゼロの元に駆け寄る姿を捕らえた。

エドアンは顔を強張らせ直ぐさまぐったりとしているゼロを抱き抱えると、俺の方に視線を向けた。

先にゼロを医務室に連れて行くからこの場を少しの間頼む、と目で訴えるエドアンに俺は軽く頷いて見せ、再び視線をハイジに戻した。

慌ただしくエドアンとベリーズが多目的ルームを去っていくのを確認し、俺はハイジに何があったのかを尋ねた。

ハイジの説明はとても説明と言えるようなものではなかったが、ハイジがどうしてこんなにも悲しんでいるのか、それは直ぐに理解できた。

ハイジの下で固く目を閉じ、覚悟を決めたように体を投げ出しているシンの震える瞼をみつめながら、俺は自分を落ち着かせるためにゆっくりと息を吐き出した。

「俺…シンがわかんねぇよ。だってね兄ちゃん、シンはゼロに酷いことをした小百合やあいつらを庇うんだ。

俺よりも小百合を庇うんだ。

俺を殺してでも小百合を庇うって言うんだよ?

ねぇどうして?俺わかんねぇよっ!!シンは俺よりも、ゼロに酷いことをする小百合の方が好きなんだ!

今まで仲良くしてくれたのも、優しくしてくれたのも、助けてくれたのも嘘だったんじゃないかって。

本当は最初から俺だけだったんじゃないかって、友達だと思ってたのは俺だけだったんじゃないかって。

俺はやっぱり病気だから、俺の考えは間違っていて、あいつらの気持ち悪い考え方が正しいんだって。

だから誰からも信用されないんだって。そして嫌われるんだって、そう思ったら出口がわからなくなって」

そう必死に訴えるハイジを宥めながら、俺は別の事を考えていた。





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あきゅろす。
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