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ここの将来を真剣に心配し、俺が真顔でそう尋ねると、この場にいる人間全員が眉を寄せた。

「…俺達をあんまり甘く見てると痛い目見るんだぜお嬢ちゃん」

我慢の限界だと言わんばかりに、一人の囚人がそう言い、小百合の上に跨がったままの俺に近づき胸倉を掴んできた。

勢いに任せ俺を床に押し倒そうとしてくるその囚人の行動が引き金になったのか、今まで動く気配のなかった傍観者達が俺を取り押さえようと一斉に群がってくる。

だけどその動きのすべては、兄ちゃんのものと比べるととても、とってもゆっくりに見えて。

俺はただただ気持ち悪い感情や、怒り、憎しみ、哀しみ、もどかしさ、落胆ばかりが増していき、感情に飲みこまれていく。


ゼロとベリーズの俺を心配し叫ぶ声だけがこの空間で俺の唯一の救いだった。

聞こえてくる耳障りな声や、許しを請う瞳が俺を更に怒りへと追い込んでいく。

「甘く見てるのは…どっちだよ…。これ以上俺を怒らせてお兄さん達が何をしたいのか、全然わかんねぇよ。

俺は兄ちゃんとの約束を破りたくねぇのにっ!


何で俺にお兄さん達を殺させようとすんの?

…怒るのはアンタらじゃない。死にたくなる程の苦痛を与えてやりたいくらいに怒ってんのは俺なんだよ。

いい加減にしろよ」

向かって来る囚人達を片っ端から黙らせていき、立っている最後の一人の胸倉を掴み右腕を振りあげた所で動きを止められた。

「よせっ!!わかったからやめろハイジ…頼む…!」

走ってここまで来たからなのか、普段よりも荒く上擦って聞こえるその慣れ親しんだ声が耳を通り抜け、俺はゆっくりと視線を上げる。

俺の右腕が使えないように力一杯俺の手首を掴むその人物を見つめると、その人物は顔を強張らせて体を固くする。

「…ねぇ、どういう事か説明してよシン」


今まさに歯をへし折ろうと左手で捕らえていた囚人を床に投げ捨て、俺は言葉を続けて吐く。

俺から逃れるように壁に張り付いていた小百合は、シンの存在に気がつくと安心したように顔を緩ませる。

俺はそんな小百合に苛立ちを覚えながら、シンに向き直り口を開いた。


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