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俺は口を無意味に開閉させている小百合を無視して、ゼロを力一杯抱きしめる。

「ごめんゼロ、もう大丈夫だよ。これ以上ゼロに怖い事なんて俺がさせない。そんなの…俺が絶対に許さねぇから」

俺達のやり取りを人事のように見ている囚人達を睨みつけ、威嚇するように俺がそうゼロに言い聞かせると、ゼロはボロボロと大粒の涙を流しながら縋るように俺の体を強く抱きしめてくる。

歯を食いしばり声を殺そうとするゼロを見て、小百合達に対する怒りが増していく。

俺がぎゅうっと腕に力を込めると、ゼロは何かに気がついたように俺の胸を弱々しい力で必死に押し返した。

「あ…、…俺…っ」

表情を強張らせ、俺から離れようとするゼロが何を言いたいのか、直ぐにわかった。

「ごめん、汚れる…から」

ゼロの顔や、胸元。腹部等に付着している白濁色の液体がゼロにこんなにもつらい事を言わせているのかと思うと、ゼロを傷つけた奴らを地獄につき落としてやりたくて堪らなくなる。

俺は何も言葉を返さずにゼロの顎を固定すると、震えるその唇に優しく口付けた。

ゼロは嫌がって抵抗していたけど、俺はゼロにこれ以上自分を傷つける必要はないんだって事をわかって欲しくて、構わず何度も深く口付ける。

俺はゼロの口内を汚す独特の苦味を拭い取るように、丁寧に舌を滑らせた。

「ふんっ、なにさこんなもの…俺がいくらでも浄化してやる!!


俺が居る限りゼロを汚す事なんか一生できねぇんだよ」

ゼロの口内を完全に綺麗にしたのを確認して、怒りのせいで喧嘩ごしになる口調を気にする事なく、俺は小百合達に向かって暴言を吐く。

そんな俺を見てゼロは唖然としていたけど、次第にゼロの表情が変わっていった。

「やっぱり…馬鹿だろ…お前…」

そう言って呆れたように、それでいて何処か優しく笑うゼロを見た瞬間。

俺の胸は息苦しい程に締め付けられた。


溢れ出てくる愛しさを持て余し、少しの間動けないでいると、小さな人影が俺達を覆った。


顔を上げると、ベリーズがボタボタと涙を零しながら難しい顔をして立っていた。

ゼロはベリーズの姿を確認すると、俺から体を離し、ベリーズに右手を伸ばそうとして途中で右手を止めた。

「その様子だと、無事そうだな…」

ベリーズの様子を見て安堵したように息を吐き、ゼロが苦笑いすると、ベリーズはゼロに抱き着いた。




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