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更にベリーズは俺を悩ませる言葉を続けた。

「船長はありえない位に平和主義ですし、子供っぽい所もありますし、計画性無かったりしますけど、悪い人ではありませんから。船長の事、宜しくお願いします」

宜しくお願いされる意味がわからねぇ。

「何で俺にそんな事言うんだよ」

俺がそう尋ねるとベリーズは不思議そうに首を傾げ、目を大きくさせる。

「船長からのプロポーズ受け入れたんじゃないんですか?」

「…そんなもんを受け入れた覚えはねぇよ」

「そうなんですか…キスマークを付ける仲になったって事はそう言う事かと思ったんですけど」

僕の早とちりみたいですね、とベリーズは俺に軽い謝罪をする。

ベリーズの頭の中で何がどうなったらそう言う考えに行き着くのか疑問に感じた。

「でもまぁ未来の事はわかりませんからね。プロポーズを受けないにしてもお2人はいい関係を築く事ができると思います。きっと船長のそばに入れば生きたいって思えるようになりますよ」

自信満々と言った顔ではっきりとそう言い切るベリーズに否定的な言葉を吐く事も出来ない。

「何かあったら言ってくださいね。僕でよければいつでも相談にのりますので」

「気を使わせて悪いな。だが、エドアンのあれは一時の気の迷いか、或いは病気だ。直ぐに目を覚ます。だからお前の思っているような事にはならねぇよ」

「どうしてそう思うんです?ラクハさんは船長の事が嫌いなんですか?」

俺はベリーズのその質問に答える言葉を頭の中で整理し組み立てる。

「別に嫌いじゃない。…嫌いじゃねぇよ。俺が好きとか嫌いとかの前に、俺は何も持ってねぇんだよ。アイツに好かれるようなものを何ひとつ。だからエドアンも直に気がつくだろ。大勢いる中で何も俺を選ぶ事は無いってな」

丁度労働終了のベルが聞こえて来たので道具を片付けに行こうと足を踏み出すと背中に温もりを感じた。

顔を後ろに向けるとベリーズが俺の背中に抱きつき歯を食いしばっていた。

「ラクハさんは十分過ぎるくらいに魅力的です。だからそんなに自分を卑下しないでください。何だか僕いろんな意味でラクハさんが凄く心配ですよ」

今にも泣き出しそうな目をして必死にそう訴えてくるベリーズの頭をただ撫でてやる事しか俺にはできなかった。



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あきゅろす。
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