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「…やっぱり納得いかねぇ。ノアさん、何でこいつの言う事を聞くんすか。こんな調子にのってるだけの奴らなんか酷い目にあわせてやればいいんすよ」
腕の中から発せられた声に視線を下げると、白髪の男は露骨に顔をしかめてノアに救いの眼差しを向けていた。
そんな小百合と言う男の発言に俺は他のテーブルに目を向ける。
すると俺の腕の中に居る男同様、納得のいかない顔をしてノアを見つめる囚人達の姿があった。
ノアは白髪の男の訴えに小さなため息をついて小百合と言う男の顔を見つめる。
「俺が何故こいつの条件を飲んだのか理解出来ねぇ奴はこいつらの目をよく見ておくといい。
ラクハに関して言えば、俺の経験上こう言う冷め切った目をした奴は悪い意味で腹をくくっちまってる。
こいつが平穏を望み、争いを避けたいと思っているからこうして俺と真面目に話し合いを持ちかけてくるのであって、こいつが俺達を話のわからねぇ敵だと認識した時点で、こいつは何の躊躇いもなく小百合の喉を切り裂き自分達の身を守る為に表情一つ変えずに囚人殺しをする、そう言う目をしてやがる」
まるで俺の事を知り尽くしているようなノアの物言いと、俺へと向けられる視線に苛立ちを覚える。
「…そう言い切れる根拠は何だ」
俺がそう尋ねるとノアの表情が変化した。
「お前みたいな目をした奴に覚えがある」
そう言って目を伏せるノアの視線の先に何が映っているのか、俺にわかる筈もなかった。
「2日間お前らにシンをつけてやる。必要ねぇとは思うがシンがいれば気軽にお前らに近づけねぇだろ」
ノアのその言葉にハイジは嬉しそうな声をあげ、シン・アベルは目を見開き硬直する。
「ノアさん…何で俺がこいつらを守ってやらなきゃならないんすか」
「ラクハとハイジが居るんだ、お前は何もする必要はねぇ。こいつらの様子を俺に教えてくれればいい。ネバーランドに入れとまでは言わねぇ」
「…まじっすか」
ノアは打ちひしがれているシン・アベルを宥めながら俺の方を見た。
「条件を飲み、安全面も保証した。まだ文句があるか?」
文句のつけようのないノアの気配りにナイフを下ろし男を解放しようとして俺は思い留まる。
「…それを返してくれないか」
ノアの手元にある眼鏡とバンダナを見つめながら真顔でそう言う俺にノアは何故だか噴き出した。
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