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「お前ら、そうだな…取り合えずエデンの奴らを5人ヤれ。なるべくリズの近くに居る奴をだ。そうすりゃこっちが喧嘩してぇっつーのが伝わる。
血の気の多い奴らの事だ、喜んで食いついてくるだろ」
ノアは俺の方に視線をやりながらノアの箱船の囚人達にそう指示する。
「そんな事でエデンの奴らを俺達から遠ざけられるのか?」
疑いの眼差しを向ける俺にノアは面倒くさそうに口を開く。
「リズを筆頭にエデンの奴らは何でもいいからとにかく暴れたくて仕方ねぇんだ。いつも人を殴る口実を考えてる奴らの事だ、食いつかねぇ訳がねぇ」
「そんな事をして…アンタの所は大丈夫なのか?」
念の為にそう尋ねるとノアは怪訝そうな顔で俺を見た。
「エデンの奴ら相手にまいってるようじゃここじゃ生きていけねぇよ。アリスの森の奴らとやり合う事を考えれば、純粋に喧嘩を楽しんでるだけ可愛いもんだ」
そう言ってノアの箱船の囚人達に視線を送るノアの眼差しは優しく穏やかなものであった。
俺はノアの意外な一面を見て内心動揺していたが、ノアの言葉に引っかかる所があり直ぐに頭を落ち着ける。
「…アリスの森の囚人とやり合うのはそんなに大変な事なのか?」
「チェシャ猫と同じ班ならわかるだろ。アリスの森の奴らには基本的に話が通じねぇ。やられたからやり返すって言う観念もなければ仲間を助け合う事もしねぇ。ただ快楽の為に敵をいたぶり殺す、それだけだ」
……聞かなければ良かったな。
会話が出来ねぇって…まさか全員チェシャ猫みたいにふざけた性格をしているのか…?
チェシャ猫の分身を想像して一抹の不安をよぎらせているとノアはそんな俺を嘲笑うように鼻を鳴らした。
「あのサイコ野郎を手懐けられる奴がいたら会ってみたいぜ。ウチの奴らが勝手な事をした詫びに1つアドバイスしてやる。お前らの要求や話を伝えたい時はワンに言え。チャラチャラした身なりの生意気な野郎だが、アリスの森の奴らの中でまともに会話が出来るのは奴だけだ」
ノアの出したその名前には覚えがあった。
ワン、…通称ワンワン。
折角アドバイスをしてくれたノアには悪いがそのアドバイスは役にたちそうになかった。
2日連続労働中にベリーズが奴にぶつかったせいで悪い意味で親しくなってしまっている。
今日の昼間奴を宥めるのにどれだけ時間を費やし、どれだけ苦労したか。
それを考えると頭が痛かった。
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