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「はっ…、人質に取る相手が悪かったな。俺はナイフなんかじゃビビらねぇよ。第一てめぇみてぇな腰抜けに出来るのかよ」
小百合と言う男はそう言って俺を嘲笑うが、俺の腕の下にある心臓はどこか異常でもあるんじゃないのかと疑いたくなる程に早鐘を打ち、そらされてはいるが顔は相変わらず赤いままだ。
「出来ないと思うか?」
俺より僅かに低い位置にある男の顔を見ずに視線をノアにやる。
「いいからっ黙ってろ小百合、絶対に余計な事を言うんじゃねぇ」
わからせてやる為に耳の1つでも落としてやった方がいいのかと思案し始めた所でシン・アベルが焦ったように立ち上がり血相を変えて小百合と言う男を黙らせる。
シン・アベルの顔色を見て少しは危機感を持ったのか小百合と言う男の顔色が変わった。
「そう熱くなるなよ、こんな所で何しでかそうってんだ。ちょっとからかっただけじゃねぇか」
「悪いが俺に冗談は通じねぇ。アンタにとっては余興の1つかも知れねぇがこっちにとっては死活問題なんだ」
宥めようとするノアに淡々とそう返すとノアはため息を吐きだした。
「…お前の話を飲まねぇとは言ってねぇだろうが。いいから小百合を解放しろよ。俺と分かり合いてぇんだろ今後の為にも。もしも俺の目の前で小百合に傷をつけて見ろ。俺は喧嘩を売られたもんだと受けとるぜ」
ノアはそれがどう言う意味かわからねぇ程馬鹿じゃねぇだろ?と気だるげに言葉を投げてよこすが俺の考えは変わらない。
「俺を侮辱し、コケにしたのはアンタだ。話を飲んでくれるんならアンタの心意気をかって聞き流してやろうと思っていたが話すらまともに聞かねぇんじゃ関係ねぇ。
どうせアンタが話の通じない俺の敵であるんなら俺が苦労して怒りを抑える必要はねぇだろ。
俺がコイツを選んだ理由はわかるよな?」
腕の中の男の顔を上げさせそう言うとノアは顔を右手で覆い深い溜め息をついた。
「…お前のその無鉄砲さはやはり問題だな小百合」
呆れたようにそうぼやくノアに反論するように男は口を開く。
「何が問題なんすか、いつもみたいに気に食わねぇから殴ってやっただけっすよ。コイツ完全に調子に乗ってんじゃないっすか」
むきになってそう主張する小百合と言う男に殴った相手が問題なんだ馬鹿、と男を咎めシン・アベルはうなだれた。
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