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不安げに瞳を揺らすゼロとベリーズにそう告げ俺はその場を離れるとノア達が座っている方へと足を進める。

俺が何をしようとしているのかわからないのかノアは俺から視線を外さずに警戒を強めていくのがわかる。

俺はその場を動かずに目だけで俺を追ってくるノアと表情を固くしポケットに手を突っ込み構えるシン・アベルを通り過ぎた所で足を止める。

俺は俺の突然の行動に顔を赤くしたまま口を開閉させている男の腕を掴み無理矢理立ち上がらせる。

「何しやがるっ、ヤろうってのか…」

男の体を後ろから拘束しようと腕を伸ばす俺から逃れようと暴れる白髪の男は、喉元に感じた冷たさの意味を理解したのか体を強ばらせた。

「こうするんだ」

さっきの質問の返事を返すつもりでゼロにそう言うとゼロは目と口を大きく開いた顔で俺を見つめてくる。

「…それは何の真似だラクハ」

ノアは流石に俺を嘲笑う余裕は無いのか表情を曇らせ俺を睨みつけてくる。

「こっちが手荒な真似をしなければ平穏に過ごせると思っていた俺が間違っていた。

いくら俺が争いを避けようと配慮しても懲りずに俺達に危害を加えようと向かってくる。

これからの事を考えてお互いが損しない条件を出し、尚且つ不快な思いをさせねぇように敬意をはらって交渉しているって言うのにこっちの話を初めから聞く気がねぇ。

それどころか…こっちがどれだけ大変な思いをして感情を殺しているかも知らずに次から次に俺の怒りを増殖させやがる。

どこまでも…俺の話を聞く気がねぇって言うんなら俺にも考えがある」

そこまで言って一度言葉を切ると、俺は俺の腕の中で動悸を早くしている男の首に押し当てているナイフを起こし刃先を男の肌に押しつける。


「次に俺の容姿の事を一言でも話す奴がいたらこいつを血で真っ赤に染めてやる。

これで少しは俺の話を真面目に聞いてくれる気になってくれるとありがたいんだがな。

俺もまだ人を殺さずにまともな生活が送れると思っていたい」

感情のこもらない声で静かにそう告げると騒がしかった雑音が嘘のようにピタリと止んだ。




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