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俺の事をおそらく心配してくれているんであろう2人には申し訳なかったが2人の言っている事を理解する事は到底出来そうになかった。
妙な居心地の悪さを感じていると嫌な笑みを浮かべ俺を舐めるように見つめるノアと目が合った。
「…そいつは益々拝んで見てぇもんだな。
まぁ言ってみればこの話はお互いが信頼しあわねぇと成り立たねぇ話であって、
お前は素顔を晒す事で本当に俺が話を飲むのかってトコ、俺は2日間…アリスの森は厄介だからエデンの奴らをお前らから遠ざけたとして、2日後に本当にハイジが俺の所に来るのかってトコが問題な訳だろ?
こっちも苦労してエデンの奴らを相手にしてやった挙げ句が結局フック船長がでしゃばってきやがるなんて事になったらたまんねぇからなぁ…?
」
ノアはわざとらしく肩を回して見せ俺の反応を面白そうにうかがう。
「ちょっちょっと、ハイジさんからもラクハさんに言ってやってくださいよ!」
「お前の兄貴だろ?!いいのかよラクハが身ぐるみ剥がされてもっ」
俺にいくら説明しても無駄だと言う事を理解したのかベリーズとゼロは標的をハイジに切り替える。
ハイジは興奮気味に詰め寄る2人に思いつめたように深い溜め息をこぼした。
「…俺も2人と同じ気持ちなんだよ?だけど、兄ちゃんに何言ってもこの件に関してはどうしようもないの。
話せば長いんだけど、兄ちゃんのこれはかなりデリケートでヘヴィな問題でさぁ、俺達が何か言えば言う程兄ちゃんを追い詰めちゃう。だから俺もどうしたらいいのかわかんねぇの」
ハイジが深刻な顔をしてそんな事を言うのが不思議でたまらなかったが、今はそんな事よりもノアとの取引が優先だ。
「そんな事言ったって…じゃぁこのままラクハが地獄に飛び込むのを指をくわえて見てろっていうのかよ」
顔を再び青くして弱々しくそう零すゼロにベリーズとハイジも眉を下げた不安がありありと窺える顔で俺の方を見つめる。
「…本当に素顔を見せたらエデンの囚人を俺達から遠ざけてくれるんだな」
「お前が2日後にフック船長に泣きつかずに俺との約束を守るってんならな」
お互いの腹を探り合うようにノアと数秒間視線を絡ませた後、俺は覚悟を決めノアに信頼を売るべく静かに腕を後ろに回しバンダナに手をかけた。
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