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後ろに倒れた椅子の音が耳に鳴り響く中、異様な雰囲気を出して見つめ合うエドアンとチェシャ猫に漸く俺は口を開く。
「ちょっといいか。…何で俺に構ってくるんだ?これがGleam hole流の新人の歓迎の仕方なのか?」
こんな絡まれ方をする理由が他に思い浮かばずそう尋ねる俺にチェシャ猫は小さな笑みを溢す。
「ラクハって若干天然入ってるでしょ?違うって、俺がここへ来たのはラクハに夜のお誘いをしに来たんだよー」
チェシャ猫は軽い口調でそう言ってニコニコしている。
夜のお誘い…?
アリスの森主催による新人リンチの類いか?
「それは俺だけなのか?」
「勿論。ハイジはタイプ的に俺と被る所があるからね。
それに後2、3年待ったらハイジは俺級にいい男になると思うし。
美味しく育つまで待ってあげるニャー」
猫のポーズをしてハイジに笑いかけるチェシャ猫にハイジは目を輝かせてチェシャ猫の囚人服の裾をクイクイと引っ張る。
「猫さんそれ本当?!俺いい男になる?兄ちゃん今の聞いたー?!」
「可愛いなぁ。なれるよー?俺も昔童顔だったんだぜ?」
仲良さげに話をしている2人に複雑な思いを抱きながら俺は頭を捻る。
夜のお誘いとやらとハイジがチェシャ猫とタイプが被る事にどんな関係があるんだ?
俺はハイジに何かするつもりが無いらしいチェシャ猫に胸を撫で下ろしつつ、いまいち腑に落ちなかった。
まぁハイジが無事なら何も問題はねぇんだけど。
「おい」
俺がどうやってアリスの森の囚人達のリンチを乗り切ろうかと考えを廻らせているとエドアンに声をかけられた。
「安心しろよ、お前やネバーランドの囚人達に迷惑をかけねぇようにする」
俺がそう言うとエドアンは眉間のシワを深くした。
「お前勘違いしてねぇか?夜のお誘いってのは今晩アイツと寝るって事なんだぜ?」
「……集団リンチじゃないのか」
そう言えばエドアンはチェシャ猫の誘いをことごとく断ってるって言ってたな。
まさか俺と寝たいと思う奴がエドアン以外に居るとは思わなかったからそんな発想は丸っきりなかった。
俺は強制労働の時に倉庫でチェシャ猫に触られた時の感触を思いだす。
あの不快感を思い出すだけで鳥肌が立つのに寝たい訳が無かった。
考え込んでしまった俺を見てエドアンは深い溜め息をつく。
「お前の思わぬ弱点を見つけちまったな。その天然はちょっと問題だ」
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