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「…わぁぉ。兄ちゃんの生チュー見ちゃったよ…。
って…猫さんっ!俺の兄ちゃんに何してんの?!
こんな事って…兄ちゃんっ!猫さんに何されたのさ?!」
俺の腕を激しく揺さぶるハイジに、俺は濡れた唇を拭いながら一度頭を冷やし状況を冷静に把握する。
チェシャ猫が何故ここに現れたのかは分からないが殺気や俺達を緊張させるオーラは感じられない。
だが、後ろから抱きつかれていてチェシャ猫の表情がわからねぇから油断する事は出来ない。
ハイジの安全を考えてここは慎重に行動しなければならない。
「ハイジの心配するような事はしてねーよ?
ちょっとしたイタズラだよ。
お前の兄ちゃんかなりガードが固いしね」
ハイジにそう言い聞かせるチェシャ猫の声にハイジが安心したように表情を緩めた。
俺はどうしたものかと視線を動かす。
食堂内は例の如く静まり返り、俺達が居るテーブルの近くに居る囚人達は俺から遠ざかるように椅子を後ろに引き、後ろに下がっているのがわかる。
ベリーズとゼロも控え目ではあるが椅子を後ろに引き、この場に居たくないと言う意志を痛い程に伝えてくる。
俺は再び人質の気分を味わいながら視線を正面に向ける。
するとチェシャ猫に次ぐ予期せぬ出来事が起きていた。
…話が違うんじゃないのかエドアン。
Gleam holeで一番温厚じゃなかったのか。
「…クララに勝手な事してんじゃねぇよ。
今すぐそいつから離れろロゼ」
あからさまに不機嫌なオーラを放ってチェシャ猫を睨み付けているエドアンに食堂内はざわつき始める。
それにしてもエドアンは一体何に怒っているんだ?
単純にネバーランドの囚人である俺を守ろうとしているだけならわかるが、
それ以外の別のものを感じるのは俺の思い過ごしだろうか。
「どうしたのエディ。そんなに感情的になっちゃって」
チェシャ猫の声には驚きが混ざっている。
一考に俺を解放する気配の無いチェシャ猫にエドアンは勢いよく立ち上がり俺の所まで来ると、
俺の腕を掴み無理矢理俺を立たせると強引にチェシャ猫の腕から俺を引き離した。
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