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俺は取り敢えず何処の囚人だと尋ねられたのでアリスの森だと答えた。
「へー?」
エドアンは適当に流すように相づちをうつ。
そんな俺とエドアンのやり取りにベリーズがパンを口に入れる手を止め感心したように息を吐いた。
「本当にラクハさんは只者じゃないですよね?チェシャ猫に拉致されても無傷で、しかも顔色1つ変えないで戻って来るんですから」
ベリーズのその一言でエドアンの動きが止まった。
「倉庫にお前を連れ込んだのってチェシャ猫なのか?」
「あぁ。奴はど変態だな」
エドアンの声のトーンの変化に少し疑問を抱きながらも俺は黙々と食べ続ける。
「ロゼに何をされたんだ」
顔を上げて視線の先にあったエドアンの琥珀色の瞳が余りにも真剣で一瞬言葉を失ってしまう。
隣からはハイジの視線。
左斜め前からベリーズとゼロの視線。
そして真正面からはエドアンの強い視線を体に浴び居心地が悪い。
別に言えないような事はされては無いが出来れば言いたくない。
上手い言葉が咄嗟に思い浮かばず手元にあった水を口へと運んでいると何かの力によって無理矢理顔を上に向かされた。
突然の出来事と首の痛みで思考が追い付かない中、直ぐに予期せぬ災難が俺を襲う。
「…っ…?!!」
視界には黄色く輝く髪と綺麗に整った顔。
そして何より唇に感じるこの感触に覚えがあった。
「こう言う事されちゃってたんだよね、お兄ちゃん」
チェシャ猫は最後に放心している俺の唇にゆっくりと舌をなぞらせると俺の顔を固定していた手を離した。
怒りを覚えるよりも何よりもショックの方が大きかった為、後ろから抱きつくチェシャ猫の腕を払う事まで頭がまわらなかった。
こんな事予測できるか。
入所2日目にして得体の知れない猟奇的など変態に2度もキスされるなんて。
こんなダメージの食らわせ方があるんだな。
体は無傷なのにあり得ない位の脱力感を与え、一瞬にしてテンションを谷底まで引きずり落とすこの殺傷能力。
さすが国内最低最悪の刑務所だ。
まったく期待を裏切らねぇ。
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