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「確かハイジと2人でDark holeの囚人58人殺したって聞いたけど、何がラクハとハイジをそうさせたの?」

スッゲェ興味がある、と威圧感のある穏やかな笑みでチェシャ猫は俺にそう尋ねてくる。

「…お前には関係ねぇだろ」


思い出したくもない事を聞いてくるチェシャ猫に若干の苛立ちを覚えた。

「関係なくねぇよ?さすがの俺も58人は殺してねぇからなぁ。

俺、誰かに支配されたり俺のする事を邪魔されたりデカイ顔されるの嫌いなんだよね。

だからお前が俺にとって有害なら今ここでわからせてやる必要があるだろ?」

柔らかく言い聞かせるようなユックリとしたその声は明らかに殺気を含んでいた。

俺の喉元を撫でるチェシャ猫の指の感触に一瞬声が出なくなった。

どうするのが正解なんだ?

チェシャ猫の望み通り全てを話せばこの場はおさまるのか?

話した所で余計に危険な奴だと認識されハイジに被害が及ぶんじゃないのか。

その可能性の方が高いのなら、今ここで嫌な思いをしてまでコイツに話す必要はない。

あの最悪な出来事を思い出す位なら今ここでチェシャ猫に逆らって殺された方がマシだ。

当然、ハイジを後に残していく事になる訳だから道連れにはしてやるけどな。

まぁこれはあくまで最低最悪なシナリオであってまだそうなると決まった訳じゃない。

俺は気持ちを落ち着ける為に静かに深呼吸すると、正直にチェシャ猫の目を見つめて今思っている事をそのまま話した。


「…これは昨日ノアにも言った事だが俺達はただ平和に過ごしたいだけなんだ。

だからお前に喧嘩を売る気もなければデカイ顔をする気もない。

現に今だってこんな状況だって言うのにお前の話を大人しく聞いてんだろ。

俺達に危害を加えてこない限りこっちからアクションを起こすつもりは無い」

そこまで言うとチェシャ猫はふーん、とつまらなそうな声を出した。

「ラクハもエディみたく平和主義者なんだ」

「…あそこまで酷くはねぇけどな。アレは一種の病気だろ」

俺が歓迎パーティーの時のエドアンの様子を思い出しながらそう言うとチェシャ猫は吹き出した。


「病気ね、確かに。

今じゃすっかり丸くなっちゃって、とてもGleam holeに革命を起こした偉大な教祖様には思えない」

チェシャ猫はそう言ってふにゃっと笑った。
チェシャ猫の殺気が消えた事に俺は一先ず胸を撫で下ろした。




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