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「…嘘付き呼ばわりされる覚えはない。俺は間違っても天使何かじゃねぇからな」
何を思って皆が俺を天使に例えるのか分からないが、間違ってもそれはあり得ない。
「えらく否定的だねぇ、何か天使に恨みでもあるの?」
舐めるような視線で俺を見つめてくるチェシャ猫に俺は答えを返さなかった。
天使なんて俺の背中の刺青を見たら絶対に言えない言葉だ。
…まぁハイジは別として。
ハイジは色々と考え方、感性なんかが独創的だから俺を天使だと言い出した所で別におかしくはない。
チェシャ猫は俺が返事を返さない事を特に気にした様子も無く、俺の顔を固定したまま至近距離で俺の顔を見つめてくる。
「…このSっぽい目が凄くいい。興奮する」
チェシャ猫はうっとりとした声でそうもらすが、
俺は思いの外(ほか)入所2日目にして男にキスされたと言う事実に暫く立ち直れないかも知れない、とかなりの精神的ダメージを受けていたためチェシャ猫の言葉が頭に入ってこない。
「…ねぇ、ラクハ。お前俺のものにならねぇ?」
自分の名前を認識しているチェシャ猫に俺は少し驚いた。
しかしここの奴は変な奴が多いんだな。
嫁になれだの俺のものになれだの。
ハイジなら分かるがよく俺にそんな事が言えるな。
理解が出来ねぇ。
「俺に男と寝る趣味はねぇよ」
チェシャ猫相手に強い言葉で拒絶して機嫌を損ねられでもしたら堪らないと俺は言葉を選んで口にする。
しかし俺のそんな配慮はまったく意味をなさなかった。
「そんなの誰だってそうだよ。けど暫くここで過ごせば嫌でも男に目覚めるから大丈夫だって」
…遠回しの言い方が伝わる相手じゃなかった。
「俺じゃなくてもお前なら相手に困らねぇだろ。俺はお前の希望に答えられるような奴じゃない」
俺がそう言うとチェシャ猫は面白そうに笑った。
「今現在ラクハは十分に俺の希望に答えてるよ」
意味が分からず眉を寄せる俺にチェシャ猫は更に続ける。
「正直半信半疑だったけど確信した。俺と2人っきり、しかもこんな状況、ネバーランドに配属された以上エディが俺がどんな奴か話てる筈なのにまったく顔色を変えない」
…顔に出ないだけで内心は穏やかじゃねぇんだけどな。
「Dark holeを壊滅させたって言うの本当でしょ?」
「…初めからそう言ってんだろ」
溜め息をついてそう返す俺にチェシャ猫は口元に笑みを浮かべた。
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