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短編小説
再会 ――序章――
「翔君って寿命以外で死ぬ事無いんじゃない?」

「どうしてそう思うんですか?」


美由希の呟きに答えたのは人間形態で掃除をしていたシセルだ。


「だって、あれだけ体鍛えてて、大怪我したって自分で治せるし、他にも色んな魔法使えるんでしょ?」


年齢不相応とはいえ、小さな体と少ない体力で恭也と引き分けた(互いに体力の限界に来て倒れている)翔を見ながら美由紀が言う。

補足しておくなら試合において翔は身体強化も含めて一切魔法を使用していない。純粋な力と技術での勝負である。

力も体力も恭也に劣る翔は、膨大な経験で得、日々の鍛錬で錆付かせず磨いている技術で引き分けている。
試合をした最初の頃は、圧倒的に翔が優性(というか恭也完敗)だったが、恭也の弛まぬ鍛錬と様々なスタイルとの実戦(他流派との試合、別命道場破り)により最近では(双方体力切れによる)引き分けが多くなっている。
ちなみに恭也が翔に挑むのを止めないのは「内情がどうだろうと年下に負けたままでいられるか!」という負けん気の強さからだろう。「なのはとはやての為にも確実に勝てるようにならねば。2人は嫁にはやらん!」何も聞こえない。聞こえ無いったら聞こえません!


「フューグの死因で多いのは事故死ですよ」


そんな美由希にシセルはサラリと言う。というか、シセルさん。そんな優しい笑顔で言う事ではないような気がするんですが「フューグが死ぬを何度経験してると思ってるんです?当の昔に慣れました」はい。


「事故?平然と回避しそう。というか、それしか浮かばないんだけど」

「魔法がある世界で実力をある程度示しているならそうですね。間一髪で転移魔法使ったとか」

「やっぱり。・・・・・・・・・ん?もしかして、魔法が無い世界だと間一髪じゃなくて直撃?」

「ええ。魔法の無い世界やあっても使えない人間として過ごしている時は、事件や事故に巻き込まれてもフューグは魔法使わず流れに任せちゃうんですよ。それでそのまま死んじゃうんです」

「へー・・・・・・って、ここも魔法無い世界じゃなかった!?」

「そうですよ」


慌てる美由希に「何を今更」と不思議そうに首を傾げるシセル。


「ってことは、翔君、事故に遭ったら死んじゃうじゃない!」

「ええ」


やはり不思議そうにシセルは肯定する。




「翔君!」

「なんですか?」

「翔君は生まれ変わっても記憶あるんだよね!」

「ええ」

「なら、約束して―――」





「美由希、やけに真剣な顔で翔と話していたがどうしたんだ?」


家族揃っての食事中、ふと思い出した恭也が尋ね


「翔君がわたしより先に死んだら、必ず会いに来てって約束してたの」

「「ぶっ」」


あまりにも突拍子もない言葉に恭也と(聞いていた)士郎が味噌汁を吹き出した。
ちなみに味噌汁を飲んでいなかった。けど御飯を呑み込んでいた最中だったなのはは喉に詰まらせジタバタと悶え、何も食べている最中ではなかった桃子は目を見開きながらも直ぐに娘の様子に気付き背を叩き飲み物(味噌汁ではありません)を渡していた。


「突然どうしたんだ」
「なんでそんな話になったんだ?」


娘(妹)のピンチに気付かない。何て事はなく、なのはが落ち着くと男達は美由希に問い掛ける。

が、その質問は桃子となのはも気になっているので2人もじっと美由希を見ている。


そして美由希はシセルから聞いた話を家族に話した。







「そうなのかい?」


話を聞き終わった士郎の問いに


「ええ」


翔はアッサリと頷いた。


「老衰で死ねたのなんて1%くらいですかね〜・・・・・・・・・自分で言ってなんだけど凹む・・・・・・


が、続けた言葉にガックリと肩を落とし


「平穏。平和。何て素敵な言葉なんだろう・・・ああ。やっぱり平穏な生活は至福だ。至高と言ってもいいね。平穏・・・牧歌的な生活も良いかも・・・・・・ブツブツ」


何かのスイッチが入ってしまったのか、そのままブツブツと呟きだす。


翔の背負う影と、呟き(の最初の方)が聞こえてしまった高町家の人間は

「し、しょうくん・・・・・・・」
「苦労してるんだな・・・」

絶句しつつも哀れみと悲しみ・同情といったモノが過剰に込められた目を向けるしかできなかった。


士郎は目頭を押さえている。

だって、


「・・・・・・大体なんだよ、浮気相手ごと始末する為にわざわざ爆弾作って、挙句座標ミスって。それが何で俺の部屋なわけ?・・・・・・」


そりゃ泣けるって。





結局翔は異変を感じてやって来たラディア(の黄金の左)によって現実に復帰した。それまでずっと愚痴っていたともいえるが・・・・・・

ラディアは翔を正気に戻すと八神家へと帰って行った。だって奥さんはそっちだし。


「お見苦しいものをお見せして済みません」


ラディアが去った後の高町家にて、頭を下げた翔の顔は赤かった。まあ、恥ずかしいだろう。

呟きが聞こえてしまっていた一同はそれに触れることなく謝罪を受け入れた。

まあ、

「翔君、今晩は一緒に飲もうか」
「士郎さんたら。もう、今日は許して上げます」

心優しい夫婦の言葉が心(主に羞恥心)に染みたとは翔の弁である。



そして結局、全員が美由希と同じ約束


―――自分達より先に死んだ時は、生まれ変わったら会いに来る事―――


を取り付けたのだった。














翌日、なのはから話を聞いたはやてとフェイトがその日の内に同じ約束をしたのはもはや当然である。



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あきゅろす。
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