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短編小説
あり得るかもしれない未来 2.1
「・・・ただいま・・・」


俯き下だけを見、暗い影を背負うどころか増殖させつつある影を纏いながらトボトボと歩いている敬愛する主の姿に、ヴォルケンリッター達は目を見開き、大混乱に陥った。





「アンちゃんが出て行った・・・」


俯いたままポツリと零された言葉に、やっと主の落ち込みの原因を聞けた彼女達+αは安堵した。

「・・・なんで皆は驚かへんの?」

だが、はやては彼女等の不自然さに気づき顔を上げる。


「主はやて、我等は彼とは何度も顔を合わせていました。その事はご存じですね」

「うん。皆から聞いてたし」

「本当に色々な世界で遭い、奴は一つ所に留まってはいませんでした。リベンジに向かいもぬけの殻だった事が何度あった事か!」

その時の事を思い出しのかシグナムの握られた拳がプルプルと震えている。

「話ずれてんぞ」
「すまない」

ヴィータの突っ込みにハッと顔を上げるシグナム。

「あいつは兎に角常に場所を移動している奴でした」
「確かに「わたしは永遠の旅人だよ」とかほざいてたよな」
「あの時は主に彼女のコアを奪えと言われて苦労したわね。・・・・・・見つけるのに」
「移動が世界単位だったからな」

シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラの順でぼやく。どうやら彼女達にとっても溜まったモノがあったらしい。

「え?ヴィータ・シャマル、その時アンちゃんって女の人だったん?」

呆然と話を聞いていたはやてが気がつく。

「ああ。女らしくは無かったけどな」
「色んな世界で短期の傭兵してましたよ。言ってませんでした?男にも女にも生まれたことがある、って」
「男の時も遭っていたな。最初は「何回か前の生の時にあってる」とか言われても信じられなかったが」

「毎回毎回あんな条件を!!」

きつく拳を握ったシグナムが叫ぶ。

「アレで同じ奴だって認めたんだよな」
「まあ、わたし達にあんな条件出してくるのはあの人くらいでしたからね」

シャマルが苦笑しながら言う。

「どんな条件だったん?」


「「「『君達が勝ったらリンカーコアをあげる、僕が勝ったら一晩付き合って』」」」


ヴォルケンリッターの(ただしザフィーラ除く)の声が重なる。
ザフィーラは小声で「『男に興味ないから君はいい』だったな」と呟いていたが。


「同じ奴だって解った時は、コアの事なんか構わず殺しに掛かったのに返り討ちにあったんだよな・・・」


ヴィータが遠い目をしながら言い、シグナムも同じく遠い目をして無言でいる当り同じだったのだろう。


「うわ〜 お、大人や・・・」


はやては何を想像したのか赤くなっている。


「シグナム、ヴィータ、シャマル、主に聞かせる話ではないぞ」


そんなはやてを見て(今まで矛先が向くのをおそれて黙っていた)ザフィーラが注意する。


「あ、ああ。そうだな」

「お前は関係なかったからな!」と言いたかったシグナムだが、主の姿に咳払いをして心を落ち着け


「話を戻しますが、今まで我等は時空管理局と対立した事が何度もあります。だからこそ我等は管理局に注意もしてきました。邪魔が入るのと同時に蒐集相手がやってくるという事でもありましたから」

話を元に戻した。

「まあ、来るのは魔術師なんやからそーやろうね」

うんうん頷くはやて。

「ですが管理局に注意していたのは奴も同じでした」

「え?」

「我等と闘っている時でも、管理局が来るといち早くその場を脱し、決して管理局と接触しようとはしませんでした。
 闘いを放り出して雲隠れされる事数回で、我等は悟りました”奴は己の特殊性から管理局を警戒している”と」

「だから今回意外だったのよね、管理局が関わってるのに動かないんだもの」

「ああ、聞く所によると管理局と最初に接触したのは我等の事の半年程前らしいしな」

「今までなら管理局の船がこの世界に来た時点で逃げてるもんな」

「うむ、奴の行動パターンからすると信じられん状態だったからな。我等も奴の事については口止めはされていたが」


ヴォルケンリッターにとっては、翔が今まで留まっていた事の方が信じられなかったので、姿を隠した事についてはむしろ納得しているのだ。


「けど、はやてを悲しませんのは駄目だ」
「確かに」
「では、見つけたら一太刀見舞っておこう」
「あたしもギガント一発喰らわしてやる。今までの恨みも含めて!」
「待て、1人では返り討ちに遭うぞ」
「そうね。全員の方が確率はあるわね」

盛り上がるヴォルケンリッター達。








そんな輪から外れた場所で―――



「わ、わたしらが、管理局に入ったからいなくなったん・・・・・・?」



―――青い顔をしたはやてが俯き抱えた頭の間から呟いていた。








はやてはこの不安を誰にも言わなかった。

――信じたくなかったから
――恭也から聞いた「仕事」という理由が本当だと信じたかったから




翔が出て行った事を知った日の事だった。


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あきゅろす。
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