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短編小説
教える時は正確に・おまけ1
【明日の訓練は早朝も含めて午前中は中止。午後の訓練はちょっと大変かもしれないからしっかり休む事】


就寝前、フォワード陣全員の下へ届いた(文面だけの)通達。

受け取った者達は「どうしたんだろう?」と首を捻りながらも「隊長達も忙しいんだし」と納得して就寝した。





そして翌昼食後、


集まったフォアード陣は首を傾げていた。

なぜなら


「あ、あの… 何で部隊長も居られるんですか?」
「何で皆さんバリアジャケット着てるんですか?」
「あの、臨戦態勢に見えるのは僕の気のせいでしょうか?」
「何かあったんですか?」


部隊長分隊長3人が勢揃いの上、既にバリアジャケット(1人は騎士甲冑)装着済み(でデバイスもきっちり手にしています)なのだ。

3人はフォワード陣の驚きには構わず


「午前中はゆっくり休めたかな?」
「午後は模擬戦だよ」
「相手はわたしら3人なー」


ニッコリと微笑んで言った。言ってくれた。


「な、なんでですか!!??」


誰のモノかははっきりしない、もしかしたら全員のだったかもしれない叫びが(フォワード陣から)響いた。





「パパ!」

「ヴィヴィオ。昨日は突然用事が出来ちゃってごめんね」


部屋に入るなり飛びついてきたヴィヴィオを、慌てる事無く抱き上げ翔は謝る。
ちなみに現在はとある(六課に所属する)少女達との(肉体言語を用いての)話し合いをした翌日だ。


「戻ってきてくれたからいーの!」

「ありがとう。
 そういえば、ママ達からちゃんと教えてもらったかな?」

「うん。おおきくならないとケッコンできなくて、ヴィヴィオちいさいからだめなの」


抱き上げたままソファーに移動し腰掛けた翔の膝に座ったヴィヴィオは覚えた事を言う。願いが叶わないという事なので落ち込み気味だが。


「そうだよ」


そんなヴィヴィオの頭を撫でながら翔はその言葉を肯定する。なぜなら、彼にとっても譲れない事が含まれてるから。

その後も落ち込むヴィヴィオと慰める翔の会話は続き、(フォワードの2名が思ったほど酷くなかった事から(だって五体満足だったし、例え膝が笑ってようが一歩踏み出すだけで歯を食い縛っていようが起き上がれていたし)安心していた)母親達は介入しなかった事を悔やむ言葉をヴィヴィオは放った。


「パパがケッコンしたらヴィヴィオとケッコンできなくなるから、ヴィヴィオが大きくなるまでパパケッコンしないで!」


そして母親達が呆気に取られる間に“パパ”とヴィヴィオの会話は進む。

「ん〜、大きくなってもヴィヴィオと結婚するとは限らないんだよ?」

「パパヴィヴィオのこと嫌いなの?」

「そんな事無い。大好きだよ。
 けどね、娘への愛情と奥さんへの愛情は違うんだよ。だから、ヴィヴィオが大きくなっても娘として愛してるのは確実だけど、女性として結婚したいという意味で愛するかは分からないんだ」

「ん〜…よくわからないけど、パパケッコンしちゃったらヴィヴィオできないからだめ!」

「けど、ヴィヴィオが結婚出来るほど大きくなる前に、僕以外に結婚したいと思う人が出てくると思うよ?それでも駄目なの?」

「ぅ〜〜…そのときはパパケッコンしていい。けど、それまではいや…」


結果


「ん〜 じゃあこうしよう。
 ヴィヴィオが僕と結婚しなくて良いと思うか、ヴィヴィオに誰か好きな人が出来るか、ヴィヴィオが結婚できる年齢になる。この三つの内どれかになるまで僕は結婚しない。
 これで良いかな?」

「うん!」


父と娘の間で“約束”が成立してしまったのだ。(ココに落ち着くまでには“ママ達”の必死の介入があった。とだけは言っておこう)





前夜の父と娘の出来事の映像を見せられたフォワード陣は…


「えーと、微笑ましい光景ですけどこれが?」


訳が分からず首を捻った。

確かに、娘が「大きくなったらパパのお嫁さんになる!」という微笑ましい遣り取りのはずだ。交わされた言葉はちょっとだけ現実的過ぎたけど…


「ヒューはね、“約束”したらよっぽどの理由が無い限り破らないんだよ」
「それが“娘”相手なら余計にね」
「つまり、アンちゃんは最低数年は絶対誰とも結婚せえへんちゅーことや」


そんなフォワード陣にニッコリと笑ったままの隊長3人が告げる。なぜか黒い空気を発しながら…

いや、フォワード陣にもなぜかは分かった。分かってしまった。


“あの、微笑ましい(はずの)約束が成立した時点で、隊長達3人も(翔を諦めない限り)結婚することは出来なくなった”


という事が。

そして、意中の相手がいて、「当然視野に入っていたはずのモノ」が、最低数年──下手すると10年ちょっと──遠のいてしまったのだ。行動を起す前に。


これをなんとも思わない乙女はいないだろう。


そして、幸か不幸か

この場には元凶とも言える発端(又の名を“正当な八つ当たりの相手”)がいるのだ

これを利用しない手はない。誰だって当事者ならそう思うだろう。

だって、この怒りと遣り切れなさをどこかで発散しなければやってられないから。


だからこの日この時、隊長陣3名vsフォワード陣4名の模擬戦が決定したのだ。



そして説明(というか愚痴?)を聞いたスバル・ティアナ・エリオ・キャロは悟った。


───逃げられない───














「あ、シグナムやヴィータ、ザフィーラなら混じってもええでー」
「ええ。参加したかったらどうぞ」
「入るならフォワードの方でお願いします」

「「「リミッターは解除しませんせけど、わたし達(ら)本気出しますから」」」




シグナム達が参加したかは分からない。(筆者なら絶対御免であるが……バトルマニアもいるし、読者様の想像にお任せします)


そして、


訓練の結果がどうなったも不明である。

例えその日の医務室が賑わっていたとしても、その日の医務官が体力的魔力的に疲れきってグッタリしていたとしても、翌日訓練が行われなかったとしても、全ては推測であり真実は闇の中である。


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あきゅろす。
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