短編小説
再会 2 ――確認編――
「「「本当にヒュー/アンちゃん/ショウなの?」」」
全員が高町家の居間に移動し腰を下ろすと、最前列を陣取っている3人の少女が口を開いた。
ちなみに全員分(高町家+八神家(ヴォルケンリッター含む)+フェイト・アルフ+翔+翔の使い魔達)の椅子などあるはずもなく、テーブルを脇に寄せ全員が床に座っている。
もう一つ付け加えるなら、(前世)翔(であると名乗っている少年)はシセルに抱えられたままで、他の使い魔達は守るように周囲を囲んでいる。が、遠目で見れば一同の中心で吊し上げ状態に近い。
だが、3人の少女――なのは・はやて・フェイト――の問いはその場の全員が思う事で問いたい事でもあった為、全員の視線がシセルの腕の中の少年に集まる。
「まあ、年齢も外見も違いますし当然ですね」
少年、ラジェム・カーザリアはその問いを当然の物として受け入れていた。
「まずヴォルケンリッター」
呼ばれた事で軽く目を見開くシグナム・ヴィータ・シャマル。何となく予想がついたのかはやての耳を塞ぐべきかと悩むザフィーラ。
視線がラジェムとヴォルケンリッターとの間を行き来する周囲。
「“君達が勝ったらリンカーコアをあげる。僕が勝ったら一晩付き合って。けど、男に興味ないから君はいい”」
「確かに貴様だ」
「あー、間違いなくテメーだ」
「確実ですけど、それが確認方法というのは複雑ですね・・・」
「やはりそれだったか・・・・・・主の耳を塞ぐべきだったか?」
一斉に頷きラジェム=翔を認めるヴォルケンリッター達。
ザフィーラだけは起こさなかった行動について考えていたが。
また、内容が分かってしまうだけの年齢と知識は全員があるので当事者以外の一部(ぶっちゃけなのは達+美由希)は顔を赤くして乾いた笑いで誤魔化している。
「次は「わたし!」
微妙な空気に構わず紡がれようとした言葉は1人の少女に遮られる。
「なのは?」
「ヒューだって信じたいの。だから早く確信が欲しい」
なのはの真剣な瞳にラジェムは頷き
「なのはがおねしょした最後のとs「にゃー!!」
直ぐさま遮られた。
「どうしたの?」
「なんでそんな話なの!?」
「だって、限られた人しか知らない話って言うと、良い事なら仲良い人には話しちゃうもんだから必然的に恥ずかしい話になっちゃうんだよ?」
「な、なら後に回して・・・・・・」
頷ける説明だけになのははガックリと肩を落とし逃げた。
「そう?ならはやてがおねs「あかん!!」
「はやてもダメ?ならフェイトが「バルディッシュ」[Yes sir.]
なのはと同じく大声で遮ったはやてと真っ赤な顔でバルディッシュを構えるフェイト。
「わかった。なら・・・・・・・・・・・・なのはは、幼稚園入園前に士郎さんに頼まれて魔力を封印したら、泣いて暴れて、泣き疲れて眠って、起きたらまた泣いて暴れてを封印解くまで繰り返してた」
「ああ、そんな事もあったね。・・・・・・・・・・あの時は大変だった・・・」
ラジェムの言葉を士郎が遠い目をしながら肯定した事で事実と確認される。
なのはは顔を赤くして俯いている。記憶に無くとも恥ずかしいようだ。まあ、最初に話されそうになった事に比べればマシだが。
「あ、これだとなのはには分からないか。
なら、初めて飛行魔法を教えた時、魔力を込めすぎて弾丸のように飛び出して「にゃ!?ちょっとま」「やめっ」はやては大木の幹に激突して気を失って、なのはは蔦の密集地に突っ込んで動けなくなった」
「誰にも言うた事無いわたしの恥が・・・」
「速度のコントロールはもう出来るもん・・・・・・」
「なのはとはやてへの証明はこれで良いかな?それとも他のじゃないと駄目かな?」
肩を落としブツブツと呟く2人の少女へラジェムは問い掛ける一方、他の者は件の少女達から目を反らしている。
「いいです。もう他の話はしないで下さい」
「認める。今のはアンちゃんとなのはちゃんしか知らない事やったからな〜。せやから、わたしに関する他の話はせんといて下さい。お願いします」
そして当事者達は受け入れた。土下座せんばかりの懇願と共に。
「フェイトは「わたしはもう認めるからいいよ!」
貴い犠牲から学んだフェイトがラジェムの言葉を遮る。
が、
「フェイトちゃん!そんなん許されへんで!!」
「そうだよ!フェイトちゃんもちゃんと確認しなきゃ!」
犠牲者達がそれを許さない。
「「わたし達(ら)親友でしょ(やろ)!1人で逃げるなんてダメだよ(あかん)!!」」
なのは・はやて・フェイトの順で座っていたはずが、いつの間にかなのは・フェイト・はやてになって両肩をガシリと捕まれ、もの凄い気迫の籠もった顔に両側から迫られ、
「大人しいのでお願いします・・・」
敗北を悟りフェイトは肩を落とした。
「フェイトは・・・・・・初めて料理した時大量の玉葱使ってアルフを瀕死に追い込んだとか、僕を驚かそうとして Blitz Action ミスして突っ込んできて両者ノックダウンしたとかかな。これで良い?」
「良いです・・・・・・認めますからもう言わないで下さい・・・」
俯いて耳まで赤くなったフェイトは蚊の鳴くような声で懇願した。
「恭也さんは・・・士郎さんが入院した時無理な修行をしようとするんで罠を仕掛けたりお茶に睡眠薬混ぜたりして強制的に休んで貰っていた事かな?」
「あの時眠くなったのはお前のせいだったのか!?」
「あ、あはは・・・・・・確かに翔君だ・・・」
初めて知った事実に声を上げた恭也と、事実と知っているだけに乾いた笑いをあげる美由希。
「知らなかったんでしたっけ?なら、恭也さんが神速に目覚めたのはハロウィンの「認める。それ以上言うな」
「フェイトが認めたんならアタシも同じだから言わなくていいよ」
「わたしと士郎さんはもう貴方が翔君だって認めてるからいいわ」
「わたしも分かったからいいよ」
恭也が認めた事で「次は・・・」と周囲を見回したラジェムに、アルフ・桃子・美由希は告げた。
これによって、その場にいた全員が『ラジェム・カーザリア=桐原 翔』であることを認めたのだった。
そして、認めた以上
「ヒュー!」
「アンちゃん!」
「ショウ!」
3人の少女はラジェムに飛び付き――
「ぐっ!」
「にゃ!」
「ぅえ!」
――ラジェムの周囲を陣取っていた使い魔達に撃墜された。
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