きずな
一緒にいた、その理由
*
ずっと、一緒だった。
それが一番自然で、当たり前だった。
一体いつからだったんだろう。
大好きな人が、居場所が、何故か私を拒んでいるように感じ始めたのは。
「ねえ、山南さん?」
尋ねたって答えなんか返ってくるわけがない。目の前にあるのはただの冷たい石なんだから。
それでも、私が一番本心を吐き出せるのはここだった。だから、窮屈な屯所を抜けだしては毎日のようにここへと通っていた。
「山南さん、最近ね、近藤さんがよそよそしいんだ。土方さんはうまく隠してるって思ってるみたいだけど」
そう言って目を閉じると、山南さんがあの優しい笑顔で頷いてくれている気がした。何だか涙が出そうだった。
そう、最近の悩みと言ったら近藤さん達のことばかりだ。
伊東さんの主張する尊皇攘夷論、それは素晴らしいものだと思う。
そして伊東さんの持つ求心力、人を惹きつけてやまない魅力は土方さん達を恐れさせるのに十分だった。近頃は急に意識しだして、伊東さんの言動を見張りだした。
伊東さんの弟子でありとても慕っている私も、その対象なのだろう。
幹部である試衛館の面子が呼ばれる時に自分だけ外された。八番隊の出動もめっきり減った。そして何より、私を見るみんなの目に疑念が混じり始めた。
「別にさ、みんなから離れていこうとしてるわけじゃないんだよ」
人を斬ることが嫌になったのなんて数えきれないくらいある。
それでもこうしてここにいるのは、やっぱりみんなが大好きだから。
いつか道を違えることが必然なんだとしても、これまでの生き方に後悔なんてしない。
仲間だって胸を張って言える。
そうやって、必死で言い聞かせる。
信じていないのはみんな?
それとも私?
全く、悩みが尽きないな。
思いがけない長居をしちゃった。手を合わせて立ち上がると、落ち葉が一つ二つと舞って墓石の上に落ちた。
「あぁ、もうすぐ冬なんだ」
冬が来る。
私達の間にも冷たい風が吹き抜けるような、寒々しい予感が頭を過ぎった。
20091109 彩綺
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