一 春はあけぼの . 春は夜明け方が素敵。 だんだん白くなっていく、山際の空が少し明るくなって、紫色に染まった雲が細くたなびいているのが趣深いのよ。 夏は夜がいいわね。 月の明るい頃は言うまでもないわ。闇夜でもやっぱり、蛍がたくさん飛び交っているのは風流だし。それに、たったひとつやふたつほんのりと光って飛んでいくのもいいものよ。雨が降っているのも風情があるわね。 秋はもちろん夕暮れ。 夕日がさしてきて山の端にとても近くなっている頃には、烏が巣に行こうとして、三つ四つ、二つ三つくらい急いで飛んでいくのだって趣深いわ。いうまでもなく雁などが連なって飛んでいくのがとても小さく見えるのは本当に素敵。日がすっかり沈んでしまって、風の音や虫の声などは、まったく言葉で言い表せないほどに素晴らしいわ。 冬は朝早くが風流よ。 雪が降る頃は言うまでもなく、霜が降りてとても白い朝でも、またそうでなくてもたいそう寒い朝に、火などを急いで起こして、炭を運んでいくのもとても相応しいものね。昼になって、だんだん暖かく緩んでいくと、火桶の火も白い灰ばかりになってよくないわ。 20080508 彩綺 |