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君の声
君思う




今日のパーティーは上層部の狸ジジイ方の計らい(ある意味強迫)で幼い季夜を参加させることになった。

まだ幼い、しかも裏の世界の事を知らない季夜を巻き込むことになることに気が引けた
でもそんな事、上(上層部の古株)の奴等は聞いてなんてくれない

オレがボスなのに思い通りにはいかない事が悔しく、まだ自分はこのファミリーの中では力が無いことを思い知らされる(こんなんだから未だにリボーンにダメツナって言われるんだろうな…)

申し訳なく、巻き込んでしまった事を季夜に謝ると季夜ふわりと笑い大丈夫だと言ってくれた(スケッチブックに書いて)

季夜は優しい子だ

最初こそ本部の屋敷の入口からそう遠くない所で血まみれで倒れていて、保護したものの警戒した
何年もこの世界に居ると人を疑わないと死を意味すると分かっているから、信じられるのは仲間だけで、子供だろうと警戒意識を持ち油断なんてしなかった
だが実際は喋れなくそれこそあの時は脚も不自由していた(突然歩けるようになったけど…)

季夜はオレが屋敷(ここ)に保護の名目で置いている
千年伯爵という人物に追われているようで、目が覚めた当初は季夜も警戒していた
でも最近はオレのこと信じてくれたのか、屋敷に来た当初は無表情で感情に乏しかった季夜が今ではオレやリボーン達に表情を出すようになったのだ

しかもその表情、今までは無表情だった反発か破壊力が半端なかった
それこそ、あのリボーンや雲雀さん、骸に季夜が笑いかけた時の三人の反応は最高だった
思い出しただけで笑えてくる程傑作だった

季夜は変装していたのか、最初は金髪に蒼い瞳と典型的な外国人だった。(その容姿のおかげでオレがイタリア人だと勘違いして日本語じゃなくてイタリア語で話しかけたら通じなく苦労した)それが何かの拍子でその道具が壊れたらしく、驚くことに綺麗な黒髪に黒い瞳をしていた。その姿は精密に作られた人形のようでこの容姿のせいで狙われていたのかと思った

だけど季夜の事を調べても何も出てこなかった
ボンゴレの、情報を収集する諜報機関を使っても何一つ出なかった
ここまで調べても出てこない季夜の情報に不可解な思いだった。この世界に生を受けたものなら誰だって、例え裏の人物であっても何処かしらで情報が出てくるはずだ

なのに、幼いまだ生を受けてから数年の子供の情報は皆無
可笑しいとリボーンも言っていた

いっそのこと吐かせるかとリボーンが言っていたが、季夜のあの笑顔を見るとそんなこと出来るわけなかった

いつの間にか、オレ達にとって季夜は大切な存在になっていたからだ

裏の世界に身を置くオレ達に光を与えてくれる季夜
『(お疲れ様です)』とふにゃりと笑い、言ってくれる言葉にどれだけオレが癒されたことか…

そんな季夜が部屋で一人でたまに泣いているのを知っていた
我慢しているようだけど、時間がたつにつれて、寂しくなったのだろう
よく眠れなくなって夜中に目を覚ますこともあった

ちゃんと季夜には家族が居るんだと安心した反面早く季夜を元いた場所に返してあげないとと焦る
それと同時に何故、季夜の家族は季夜を一人にさせたんだと苛立ちさえ微かにあった

これ以上大切な季夜を此方側に引きずり込みたくない
危険が伴うこの世界に季夜を巻き込みたくない


……―――そう思っていたのに


「大変です、10代目」



神様と言う者はとことんオレを苦しめたいのか


「……季夜が


拐われました」

大切な季夜を奪うなんて


「……どういうこと」

声が無意識に低くなる
ぁあ、オレは今冷静になれているだろうか
眉間に深くシワを作る隼人を見ながら思考の隅でそんなことを思った


「……山本が招待客である同盟ファミリーの令嬢に連れられ、季夜の傍を離れた所を狙ったらしく……」

「ツナっ!」

カツカツと革靴を響かせて駆けてくる山本が視界に写った
その表情は何時ものニコニコとした笑顔とはかけ離れた真っ青な顔をして苦しそうな感じだった

多分季夜が誘拐された話を聞いたんだろう

「山本…」

「すまねぇっ、ツナっ…
俺が季夜の傍を離れたから…季夜がっ…」

「落ち着け、山本」

「テメェが慌ててる場合じゃねぇだろぉがっ…落ち着け」


軽くパニックになっている山本を宥める。今パニックになった所で状況が変わるわけではない
こういうときは落ち着いて状況を判断しなければと内心、自分に言い聞かせた

ふと視界に見馴れた漆黒のハットにスーツが向かってきているのが見えた

「……リボーン」

「状況はさっき雲雀に聞いた
俺は一先ず骸やクローム、アホ牛らと招待客を帰らせる
お前は獄寺達と会議室へ向かって直ぐにでも細かい情報を確認しろ」

「…ぁあ、分かった
すまないリボーン、頼む」

今では呪いが解け、あの頃よりもオレたち同様成長した元家庭教師は相変わらず冷静に指示をくれる
普通はオレがしなければいけないことなのにと思うが去っていくリボーンに言われた言葉に思わず苦笑いになった

「お前はボンゴレのボスなんだ
…だから、そんな腑抜けたツラしてねーで冷静になれ
動揺してるのが出ないようにしているようだが隠しきれていないぞ

そんなんじゃ、分かる奴には分かる
今ここには俺たちだけじゃない同盟ファミリーも居る
隙を見せるんじゃねーぞ、ダメツナ」

どうやらオレは山本同様かなり動揺しいるようだ
軽く深呼吸をして焦る気持ちを落ち着かせる

暗示のように季夜を必ず助けると言い聞かせる
大丈夫。オレはもう中学生の頃のようなダメツナじゃない。
今のオレはマフィアのトップ、ドンボンゴレだ

はぁ…と一つ息を出し、感情を切り替える

「隼人。もしもの為に、ヴァリアーに動けるように事情を話しておいてくれ
ザンザスが動かないと判断しても、どうせいきなりパーティーが御開きになったことに疑問を持って気にしてくる筈だから、状況だけでも話しといて。」

「はい、10代目」

「山本はディーノさんに怪しい人物がいなかったか聞いてきてくれ
ディーノさん顔がある意味広いから視野が広い。主に女性に対してだけど、それでも有益な情報が出るかも知れない」

「…ああ、分かった」

「二人ともそれが終わったら会議室に」

「分かりました。10代目」

「ああ!ツナ」

先程の沈んでいた顔から一変して真剣な顔になった山本。どうやら山本も気持ちを切り替えたようだ

指示を出し、それぞれ去っていく二人を見送りオレはパーティー会場を出て会議室に向かう



今頃怖くて震えている季夜を思うと胸が締め付けられる
早く助けてあげないと……







(ボンゴレの敵対ファミリーならオレや守護者を狙わず季夜を狙ったのは頷けるな

幼い力のない子供に加え季夜は喋れない

…最適の獲物になるわけだ)





どうか頼むから

無事で居てほしい、季夜




2015/7/31

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