君の声 お休み ふと、目が覚めた 時刻は真夜中。音がしない、静かな空間だった それなのに私は目を覚ました 別に、悪夢を見たとか言う訳ではない。ただ…何かを感じた ベッドから土台を使って降りて、お気に入りの窓際に寄る そこに腰を下ろしてカーテンをゆっくり開く 綺麗な星空が見えた だが、直ぐに空から視線を反らした下を見た 此処は2階 下にはこのお屋敷の人達が手入れしている庭があり、色とりどりの花が咲いている でも私はそれにも目を向けず、別の方に視線を向ける 『……(ぁっ……消えた)』 起きたときから感じていた気配が消えた。それも私がその気配が感じられるであろう方向に目を向けた瞬間に、だ まるで見られたのに気付き、慌てて消えたみたいだ 『……』 監視されている、という可能性は有るわけではないが、その可能性が全くないとは言い切れない それが、この屋敷の人達とは限らなけど…… というかあの優しい沢田さんの事だから監視なんてことはしない もし、していてもあんなバレバレの気配ではしないと思う 子供だから気づかないと思っていても、沢田さん達なら油断しない 完璧にやると思う 彼らがどんな仕事をしているか分からないし、知らないけど、でも優しいながらに何かを守る強さがあるじゃないかと思ってる だからそんな彼らが今まで監視なんてしていたとは思わない それにあの気配はどこかで感じた覚えがある… コツンと頭を窓に預けながら視線を漂わせ、記憶の中に情報がないかと思い出してみる その時静かな部屋に扉が開く音が木霊した 微かに驚きながらも視線を部屋の入り口の方へと向ける 「気配がベッドじゃないと思ったらやっぱりか…… どうした、季夜 怖い夢でも見たのか?」 部屋に来たのは沢田さんだった 多分今までお仕事をしていたんだろう。いつも忙しそうにしてるからな…… 部屋は電気をつけていなかったので真っ暗とまではいかないが、それでも明るい廊下から入ってきた沢田さん的には暗いだろう 私は起きてからずっと暗闇の中で外を見ていたので目が馴れて、そこまで暗いとは感じないが…… それでも沢田さんは扉を閉めるとゆっくりとスムーズに、まるで普通に回りが見えているように一直線に私の座っている窓際に進んできた 目の前まで来た沢田さんは私の目線に合わせるようにしゃがんでくれた。毎回って言っていいほど、沢田さんや他の皆さんは身長が低い私の為に面と向かって話すときは私と視線を合わせる為にしゃがんでくれる 優しい人達 ピトッと頬に触れる温かさ 少し苦い顔の沢田さん 「…少し冷えてるな… …いつから、ここに座っていたんだ?風邪引くぞ?…」 『…(沢田さんはやっぱり優しい人だなぁ…あったかい…)』 沢田さんの大きな手に刷り寄りながら、そう思っているとビシッと音と共に額に軽い衝撃が走った 『Σ!?』 「何、笑ってんだ季夜 本当に風邪をひくだろうが…… (しかも、んな可愛いことして…)」 どうやらでこぴんをされたようで、 思わず額を押さえた 子供の私に痛くないように力加減してくれたのは分かるけど、驚いた 「ほら、布団に戻ろう、季夜 幼いお前がこんな時間に起きてたら後が辛いからな…」 私の様子が可笑しかったのか、フッと笑ったと思ったら私を抱き抱えてくれた 何か、最近沢田さんに抱き抱えられるの多くなったなぁ… ………別に嫌とかではないけど でも元の年齢が年齢だけに、まだ少し恥ずかしい…… 『……(ぁ、でもやっぱり… 沢田さんの腕のなかは安心する)』 「身体も冷えてるな… 一体どれぐらいの時間、窓際に居たんだ?」 『……((コテン(何分位だろう?)』 「……分からないんだな…; 全く、女の子は身体を冷やしたらいけないんだぞ」 『(…ぅ"、ごめんなさい)』 「季夜が窓際に座るのを気に入ってるのは知っているけど、程々にしないといつか本当に体調崩すからな」 『…((コクリ(はい…)』 ゆっくりとベッドに下ろされて、寝かされた 眠気はまだ余りこないけど、多分寝ないと沢田さんは出ていってはくれないだろう 疲れていても気にかけてくれる、そういう優しさがある人だと思う 今の状況では少し困りものだが… 仕方ない。前した時と同じように寝たフリでもしとこうかな… 口を動かし、おやすみないと沢田さんに向かって言う この暗闇で見えているのか些か不安だったが、それは沢田さんからお休みと返されたことによってちゃんと見えていたんだなと理解した 目を閉じてなかなか来ないであろう睡魔を待つ それと同時に沢田さんが部屋を出ていくことを祈った 遅い時間、私の様子を見に来る前まで仕事をしていたと思う沢田さんには早く自室に戻って休んでほしい 目を瞑り、じっとしていると沢田さんが動く気配がした 思ったより早く出ていくんだなと考えていたら、それは違ったようだった。驚いたことに、動いていた沢田さんの気配が私の隣に寝転んできた ポンポンと優しく、 ゆっくりと一定の早さで私の頭に触れてくる温かな手 瞑っていた瞼を開けて、沢田さんが寝転んでいる方に視線を向けた 「どうせ、季夜の事だ まだ寝れないんだろ?…だから、オレが傍に居て寝かせてやるよ」 『〃……(ば、ばれてましたか…)』 同じ手は二度食わぬと言わんばかりに沢田さんには私の思考は筒抜けだったようで、恥ずかしくて頬が少し熱を持った それでも何だかんだこの世界(ここ)に来て誰かと寝る、何てことは一度もなかったので(まぁ、元の世界でもたまにリナリーとか、寂しい時とかはアレンと寝てたが…) ほんの少しだけ私は寂しかったのだろう だからこんなにも寝るときに沢田さんが隣に居ることに喜んでいる自分がいるのだろう 「っ……〃〃〃」 沢田さんの方へ身体を向けて寝転んだまま沢田さんの腕の中に移動した 『(…沢田さん、いい香りがする)』 すりすりと刷り寄ると私とは違った香りが鼻を掠める 何処か安心する香りに襲ってこないと思っていた眠気が呆気なくやって来た ぎゅうっと沢田さんの着ていたブラウスを握る 眠気で意識がかすれかけていたので、普段はシワになるからとしない事もしてしまう それに対して沢田さんは何も言わなかった 寧ろ優しく私を抱き締めてくれた ―――ふわぁ…もぅ寝る… …お休みなさい、沢田さん 包み込む優しい温かさに私は 意識を手放した…… (スー…スー…) (あ、寝ちゃった? 全く…いつもはこんなことしないのにオレをキュン死にさせる気か… てかこんなに服掴まれたら、部屋に戻れない…… ――……まぁ、でも…) ((んむぅ…ん…スー…))(ギュウゥ (可愛いぃからいっかな…) オレも寝ようと季夜につられてと先程まで長時間に渡って頑張っていた仕事の疲れも合間って重たくなってきた瞼を閉じた 部屋には二人の寝息が木霊した 沢田さんは安心する温もり 2015/4/9 [*前へ][次へ#] [戻る] |