『オレ×オレ』
…4。
「生中2!追加ね!」
ほんのり高揚させた頬でビールを頼み、きたばかりのジョッキを一気に飲み干した。
山田と岡崎から連絡が入ったのは、約束の時間を一時間も過ぎてからだった。
山田は仕事で、岡崎はデートでキャンセル。
お前らが来いって言ったんだろ!?
今更中止にも出来ないし、結局グダグダと飲み続けている。
「飲み過ぎじゃねぇ?」
「うるさぁい。飲みたい気分なのぉ!
教師って、ストレス溜まるんだよ?」
既に半分以上出来上がっている俺に苦笑いすると、
「猫被ってるからだろ?」
遊佐が付け合わせのレモンを口に突っ込んできた。
!!
「すっぱっ!」
ぺっぺっと唾を吐きながら、更にビールを飲み干すと、
ペシッと力無く一発殴ってから煙草を加えた。
あれ?
俺、ライターどこに置いたっけ?
回らない頭でポケットを探っていると、
「つーか、ライター無くすほど酔っ払ってんじゃねぇよ。」
と遊佐が笑った。
「…酔ってねぇ。」
そう言いながら、差し出されたZippoを受け取ったが、
火が、付けられない。
相当酔っているらしい。
「もう、貸せよ。」
いつまでも付けられない俺に業を煮やして、遊佐にZippoを奪い返された。
「んー。」
ぱはぁ
あー。
まわるぅ。
…こんなに飲んだのは、いつぶりだろう。
ぐるぐると廻る視界のなかで、遊佐が悲しいそうな、辛そうな顔で俺を見ているのに気が付いた。
…この顔。
見たことある…
オイルに香水の混じったZippoの残り香に目を閉じた。
猛烈にあの頃の記憶が戻ってくる。
まだ、青臭さが抜けきれない。
大学時代の記憶。
ゆっくりと遠退く意識と共に、俺はその夢の中へと墜ちて行った…。
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