『オレ×オレ』
…17。
「…遊佐。」
起こそうと体を揺さぶったが、起きてくれない。
どうしよう。
時間を確認しようと腕を見たら、時計が無かった。
何で!?
探してみたが、見つからない。遊佐から貰った、大事な時計だったのに…。
ため息を吐くと、勝手にバスルームを借りることにした。
正直、このままでは居たくない。
少しぬるめのシャワーで頭痛が治まってきた。
バスルームを出て、再び着ていた服を身に着けようとした時、カゴの中に綺麗に折りたたんだ服を見つけた。
新品のパンツ付き。
丁寧に
『着ろ』
の二文字が書かれたメモに目を通すと、
有り難いと拝んでみた。
用意された服に着替えた俺は、気を取り直して、もう一度部屋を見渡した。
…意外と綺麗にしてるじゃん。
そこら中から遊佐の匂いがした。
「遊佐。遊佐?起きて。」
よほど深い眠りについているのか、遊佐はピクリともしない。
…どうしようか。
ここがどこかわからない。
煙草や眼鏡。身に付けていた物はテーブルの上に置いてあったが、肝心の時計だけは見つからなかった。
このまま何も言わずに帰るのは、さすがに悪いだろう。
でも、この部屋で遊佐が起きるのを大人しく待っていられるだろうか。
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