『オレ×オレ』
…6。
この頃の俺は、この胸のもやもやの正体がまだ分からずにいた。
ダチは他に二人いたが、よく連んでいたのは遊佐。
よくいる場所は中庭か煙草の自販機前。
この日は、
そう。
俺が遊佐にZippoをあげた日だ。
そして、
俺が自分の気持ちに気付いた日−。
いつもの自販機前にたむろっていると、
「蓮くん。煙草チョーダイ?」
可愛くお願いされたので、物凄く嫌な顔を返してやった。
「…自分の吸えよ。」
「ちぇっ。」
と言って遊佐が煙草を加えたのを見届けてから、自分も煙草を取り出した。
ラークのメンソール。
俺のお気に入りだった。
「あれぇ?蓮。まだメンソールとか吸ってんの?」
「ああ。」
「…インポ一直線…」
ドカッと背中に蹴りを入れると、
「うるさい。俺の勝手だろ。」
と、隣でマルボロを加えながらケタケタ笑っている遊佐に文句を言った。
「んー。ほんのオチャメなのにぃ。」
背中についた俺の足跡を払うとポケットのライターを探している。
「あっれ?火が無い。」
「またかよ。」
自分のZippoを取り出すと、遊佐が寄ってきた。
「チョーダイ?」
「…勝手にどうぞ。」
クスクス笑いのあと、
同じ火で煙草を吸う、
この瞬間が好きだった。
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