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種運
僕はその瞳を恐れていた(キラ+シン)

50話後捏造(キラ+シン)













その瞳を僕は見つめることが出来なかった

ただただ感情を押し殺し、黙ることだけが唯一許された懺悔









「キラ」


アークエンジェルの艦内を歩いているとふいにアスランに声をかけられた

さきの大戦で議長の指示を失ったザフトと和解し、アークエンジェルやエターナルはプラントに向かい宇宙を駆けている


「ラクスもこっちに来ているのか?」


アスランはパイロットスーツのまま、駆け足で僕の目の前に寄ってくる


「多分もうすぐ来るんじゃないかな
さっき声明を受けてたから」


ザフトの声明を受けて、ラクスもすぐに返信を出していた
早ければ今にでも来るだろう


「そうか」


アスランはそう言ってすぐに戻ろうとしたから


「待って」


と制止をかけた


「僕たちに何か用でもあるの?」

「あぁ、別にいつでもいいんだが、早めのほうがいいと思って」


アスランはふと後ろに目をやった
彼の肩から顔を覗かせると少年が通路に
顔を覗かせている


「えっと…」

僕が話を詰まらせると


「シン・アスカ、インパルスとデスティニーのパイロットだ」




その瞬間
僕の背筋に緊張が走った



その赤き瞳は昔の自分の瞳に似ていたから










「あ…、」

「シン」


アスランのかけ声に彼、シンはこちらに顔を向けた


「アスラン…」

「紹介するよ、こいつは…」

「初めまして、キラ・ヤマトです」


アスランが説明する前に自ら挨拶をしていた

僕からしなければならないと思った
その瞳が、幼き自分の目にそっくりで救わなければならないと思ったからだ


「キラ・ヤマト…?アンタが?」


瞳にはみるみる憎悪や悲しみや怒り、沢山の思いが交差している


ーあぁ、僕もそうだった
傷つけられた人の為に人を憎んだ
大切なものを守れなかったのを誰かのせいにして、自分を守っていたー












「僕がフリーダムのパイロットだよ」

彼の戸惑いに依然として現実を突きつける


「キラ…」


アスランが少し戸惑いを見せたが、押し黙り僕らに背を向けその場を後にした











「君がインパルスの…デスティニーのパイロットだったんだね」


シンは俯くようにして足元を見ていた


「僕を破った子だ」

「…でも、アンタは生きてた」


押し殺していた声を絞り出しながら言葉を紡いだ

彼の様子を見て少しだけ自分と違うところを見つけた



シンは頑なに自分を守ろうとしたわけではなかったんだ
だが、自分と敵しか見ることが出来なかった
それを「守る」という言葉にすり替えていた
だからその「守る」ことが出来なければまた敵を倒そうと力をつけた



ー僕は自分の為の戦いをしていたんだー









「君はきっと…ー」

「え?」


シンは僕の呟きに気がつき、顔を上げた


「いや…、シン君」


僕は彼の前に手を出した
シンはその手をポカンと見つめた


「多分、まだ僕たちはなにも分かり合えていないから、でもきっと分かり合えると思う」


僕は無理やり両手で手を握った
彼の手は暖かかった
僕は微笑みながら彼を見つめた


「だって僕らはこれからも生き続けていくんだからさ」


そう言うとシンは静かに、でも力強く手を握りしめ泣いた


それを見てやはりシンは強い子だと思った
僕は泣けなかったから
ラクスに泣いていいと言われて、初めて生まれた子供のように














君はきっと全てを守れる力を持てるだろう
その瞳は、どこまでも澄んでいるから



END


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