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short
まさかの「アレ」



※ギャグちっく




忙しい呂佳にとって休日は貴重である。
しばらく会わなかった家族に会うために、彼はすぐさま実家へ向かった。


利央は元気だろうか。


頭の中は、最愛の弟、利央で埋め尽くされている。
鍵を開ける頃には隠しきれない嬉しさのせいでニヤニヤしていた。

「利央、いるか?」

「兄ちゃん!」

バタバタ走ってくる音は紛れもなく利央のもの。
そして

「兄ちゃんお帰りなさーい!」

出迎えた利央の姿に、呂佳は思わずバックを落とした。
別にフリフリエプロンを着けているとか、メイド服を着ているとかそういうわけではない。
とにかく、(呂佳にとっては)衝撃的なことであった。

愛すべき弟が柿ピーをもさもさ食べている。






まさかの「アレ」






利央が。
利央が柿ピーを食べている、しかも、もさもさと。


その事実は、呂佳にとって非常にショッキングなことであった。


もさもさだと。
もさもさって言ったら……おっさんみたいな物だろ!?
利央にもさもさが許されてたまるものか。
ぱくぱくだろ、どう考えても!


利央は、ショックを受けている呂佳に気付いているのかいないのか、柿ピーを食べ続けている。

ピーナッツがカリッと音を立て、呂佳は我に返った。

「利央、その柿ピーを俺によこせ」

「やだよぉ、兄ちゃんのならあっちにまだあるよ」

利央がリビングを指さす。

「いいからよこせ!」

「に、兄ちゃん?」

呂佳は利央の手から勢いよく柿ピーを奪い取り、全て自分の口に流し込んだ。
少しむせて涙目になる。


え、こわっ。
兄ちゃん、そんなに柿ピー食べたかったのかな。


見当違いなことを考えた利央は、兄の手を引き食卓へと連れていった。

「兄ちゃん、もっと食べる?」

そこにあったのは、小分けになった柿ピーの山だった。

「なんだ、この山は」

「安売りしてたって母さんが買ったの」

さぁ、消費しないと。
利央がそう言って柿ピーに手を伸ばした。
その手を呂佳が掴む。

「今からこの柿ピーは、全て兄ちゃんの物だ!」

「本当に兄ちゃんどうしたの、変だよぉ!」

呂佳が柿ピーをザザーッと流し込む。
そして涙目になる。


やばい。
もう二度と俺は柿ピーなんて食わねぇぞ。
これも利央の天使な笑顔を守るため……。


ザザーッと。
涙目に。
その様子を見て、利央は自分まで泣けてきた。


やっぱり、柿ピーが好きなんだね。
よし応援しよう!


「兄ちゃん、頑張って!あと120個だよ!」

兄ちゃんなら行けるよ!
ザザーッと。
頑張って!
涙目に。
ザザーッと。
ファイトー!
涙目に。
いっぱーつ!
ザザーッと。
涙目に……






ジリリリリ!

目覚ましの音で利央は目を開けた。
第一声は、

「柿ピーがない」

であった。

しばらく、そのままボーッとして、ハッとした。


柿ピーの山は夢だったんだ。
まぁ、兄ちゃんに会えたからいっか。
なんか兄ちゃん変だったけど。


利央が寝ぼけた頭で理解しているのと同時刻。

美丞大狭山高校の合宿所で、呂佳は目を覚ました。

そして絶叫。

「別にもさもさ位であれこれ言わねーよ!あの柿ピーめ!」

その声に驚いた滝井が「柿ピー?」と首を傾げたことは誰も知らない。









end


すいませんでした。
一度で良いから、呂佳を変にしてみたかったんです。
なんと、柿ピーの登場回数16回。







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