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お礼SS.1.あせも
2010.7.〜
お礼SS.1
それは、着替え中の出来事だった。
「うぅ、準さん」
桐青高校野球部の練習は厳しい。だが、私立と言うこともあって部室にはクーラーもあるし、シャワー室も充実しているおかげで部員達が体調を崩すということも少なかった。
練習後の熱気がこもった部室で、準太と利央はシャワーの順番を待っていた。
その時、弱々しい声が準太を呼んだ。
「どうした利央……っておい、なんだその背中!」
先輩の特権だと言って、扇風機の前を陣取っていた準太は、利央の背中を見た瞬間ギョッとした。
「なんでそんな荒れてんだよ!アレルギー?」
うわぁ、と言いながらまじまじと背中を見る。
どうやらそれは汗疹らしかった。
準太は、とりあえず陣取っていた扇風機を半分ずつにして利央に言う。
「汗疹って言っても酷すぎじゃね?薬ちゃんと塗ってるか?」
「それがね〜聞いてよォ」
利央は準太に向き直って昨日あったという出来事を話し始めた。
「オレって、いつもこの時期あせもが酷くなるんだけどね。いつもは兄ちゃんが塗ってくれんの」
そんなに仲が良かったか?この兄弟は、と準太は思ったが話しの先を促した。
「昨日兄ちゃんのだって知らなくて、食べちゃったんだよォ」
「何を?」
「イチゴアイス」
……えー。
「(なんだ、ただの兄弟喧嘩かよ)」
とたんに準太は興味を削がれたようで、鼻で笑ってこう言った。
「どーせ、それで怒って薬塗ってもらえなかったとかそんなんだろ。今電話してさっさと謝れ。そんで早く治せよ」
喧嘩内容は馬鹿馬鹿しいものであったが、利央の汗疹が酷くて痛がる様子が可哀想に見えた準太は、一応助言をしてやった。
「でも、イチゴアイスだよ?そこまで怒る?」
「そりゃ、ものすごく食いたかったんだろ」
「でもォ」
渋る利央にだんだんイライラしてきた準太は、利央のカバンを勝手に漁って携帯を取り出した。
そして[兄ちゃん]と表記された電話番号をなんの躊躇いもなく押す。
「ちょっ、準さんなにやってんのォ!?」
「今、この携帯は呂佳サンの携帯へと繋がれている」
「切って、早く!」
携帯から、利央?と言う声が聞こえて、準太は急いで利央に携帯を押し付けた。
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