short お礼SS.4.heart 2011.2.22〜 お礼SS.4 ※利央視点 キュンとなる心臓は、今は兄ちゃんの手の下にある。 反対に、オレは兄ちゃんのドクドク鳴っている心臓の上に両手を乗せた。 たまにオレ達は、今を果たして生きているのかと、確認したくなるのだ。 だって、神様はこの関係に気付いているはずだから。 heart ロザリオを引き出しに隠そうが、カーテンを閉めきって隠れるように兄ちゃんとキスしてることに、気付いていないハズがない。 明日、急に、オレの心臓が止まるかもしれない。 数秒後に、兄ちゃんの心臓の鼓動が止まるかもしれない。 それで、時間がある時は、一時間くらいずっと、兄ちゃんの心臓が動いていることを確認する。 手のひらの下の、鼓動に安心したら、毛布を被って彼とキスをする。 オレと兄ちゃんにとって、心臓が動いていることを確認する行為は、普通の行為だった。 だから、準さんが保健室で横になってるのを見て、思わず手が勝手に伸びてしまったのも、フツーの感覚が麻痺してたからなんだろう。 「な、何だよ」 準さんが焦ったような声を出す。 急に手が伸びてきたから、びっくりしたぞ。 そう続けたのを聞いて、ああ、悪いことをしたなぁと頭のどっかでうっすら考えた。 「いやあのね、心臓ちゃんと動いてるかなって、確認しようと思って」 「動いてるよ、お前、ほんっとバカだよな」 一蹴された。 手のひらの下の彼の心臓は元気そうだ。 動いてるよ。 そうだよね、動いてるよね。 「兄ちゃんも、そう言ってくれればいいのに」 「なんで急に呂佳さんがでてくるわけ」 準さんの怪訝そうな声。 なんて説明すればいいんだろう。 たまに、心臓がちゃんと動いているかどうか二人で確認するんだって、そう言うべきなの。 そういえば、先にオレの胸に耳を押し付けて来たのは、兄ちゃんだった気がする。 オレの手を、自分の心臓に当てさせたのも、兄ちゃんだ。 「準さん、何でもないよ。ありがと」 「はあ?」 久々に兄ちゃんが家に帰ってきた。 いつものように、兄ちゃんがオレの心臓に手を置こうとした。 それをオレは両手で、ゆっくり離した。 兄ちゃんは驚いているようだった。 「……どういうつもりだ」 声が掠れていて、玄関にいるのに、ここがベッドの中のような、そんな声。 「動いてるよ、オレの心臓は」 兄ちゃんは? オレは、ただ彼の顔をじっと見つめた。 兄ちゃんは、憑き物が落ちたように、ほっとした顔で言った。 「動いてるに、決まってんだろ、バカ」 「うん、オレも兄ちゃんも、バカだね」 兄ちゃんの手は、心臓じゃなくてオレの背中へ。 今までオレ達は、二人の時間を、一体どれだけ無駄にしてしまったのか。 神様、よく見てて。 今からオレ達はキスするんだから。 止められるなら止めてみなよ、彼を焦がれてやまない、この心臓を。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |